2017 Fiscal Year Research-status Report
細胞内局在性ムスカリン受容体の海馬神経新生における役割の解明
Project/Area Number |
16K19012
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
宇和田 淳介 旭川医科大学, 医学部, 助教 (70580314)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ムスカリン受容体 / 薬理学 / 脳・神経 / 受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、海馬歯状回の未分化な神経系細胞におけるムスカリン受容体の役割を調べることを目的としており、特にムスカリンM1サブタイプのうち、細胞内に局在する受容体に着目している。マウスから摘出した海馬歯状回組織から神経幹細胞、神経前駆細胞を単離・培養する系において、アゴニストであるカルバコールで刺激したところ、MAPキナーゼ系のERK1/2のリン酸化が確認された。このリン酸化は細胞膜を透過するM1受容体選択的ブロッカーであるピレンゼピンによって阻害されたものの、同じくM1選択的ブロッカーではあるが細胞膜を透過できないMT-7では阻害されなかった。細胞免疫染色によって細胞内にM1受容体が局在することが確認されたことと合わせて、細胞内のM1受容体を介したERK1/2の活性化が起こったことが示唆された。一方で、同様にM3サブタイプに選択性のあるアンタゴニストのdarifenacinで処理した場合も一部ERK1/2活性化の抑制が確認されたことから、神経幹細胞、神経前駆細胞においてM3受容体も機能している可能性が示された。実際、神経幹細胞、神経前駆細胞の初代培養系からcDNAを調製し、ムスカリン受容体サブタイプの遺伝子発現レベルをqPCRにより確認したところ、M1サブタイプとともにM3サブタイプの発現も確認された。興味深いことに、この細胞をニューロンへ分化誘導すると、M1受容体の発現は維持されたものの、M3受容体は減少する様子が確認された。このことから、神経幹細胞、神経前駆細胞は、その維持から分化成熟過程において、細胞内に局在するM1受容体と、M3受容体がそれぞれの役割を果たしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では海馬歯状回における神経幹細胞、神経前駆細胞に発現するムスカリン受容体のM1サブタイプに着目して進めてきたが、研究を進める過程で、ムスカリンM3受容体も同様に神経幹細胞、神経前駆細胞に発現して機能することが分かってきた。そのため、in vivoにおける細胞内M1受容体の役割を調べる実験を進める前に、in vitroの初代培養系でM1サブタイプとM3サブタイプの発現量、MAPキナーゼ活性化におけるそれぞれの役割を区別して解析を進めることを優先して行ってきた。そのため、当初の予定であったin vivoの解析は翌年以降に持ち越される事になった。
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Strategy for Future Research Activity |
ムスカリン受容体のノックアウトマウスを用いることで、海馬歯状回における神経幹細胞における細胞内M1受容体の機能解析を進めるとともに、M3受容体との役割の違いについて再検討を行う。
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Causes of Carryover |
一部実験を翌年に繰り越したため。
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