2016 Fiscal Year Research-status Report
新奇抗癌剤開発を目指した低分子量Gタンパク質Arf6シグナル伝達機構の解明
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16K19014
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
片桐 尚宏 筑波大学, 医学医療系, 助教 (70755686)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 低分子Gタンパク質 / ARF6 / 癌抑制ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、腫瘍血管新生と癌細胞の浸潤・転移を同時に阻害するARF6抑制ペプチドの創成のために、ARF6抑制ペプチドのスクリーニングと、ペプチドのARF6抑制能をin vitroで評価できる系の確立を行った。 初めにファージディスプレイ法を用いて、ARF6に結合するペプチドのスクリーニングを行った。使用したファージライブラリーは、ランダムな48アミノ酸からなるペプチドを発現させるDNA配列を持つ。スクリーニングの結果、71種類のARF6に結合するペプチドのアミノ酸配列を同定した。 次にスクリーニングにより同定した、ARF6結合能を持つペプチドのDNA配列を大腸菌発現用ベクターに組込み、大腸菌に発現させることでペプチドを作製した。また作製したペプチドが、ARF6特異的に結合するかを確認するためにELISAを行った。ELISAの結果、作製したペプチドはARF6に結合したが、ARF1とARF5には結合しなかったことから、ARF6特異的な結合能を持つことが判明した。 次にペプチドのARF6抑制能をin vitroで評価するために、蛍光ヌクレオチド交換アッセイの確立を行った。蛍光ヌクレオチド交換アッセイでは、タンパク質に結合した時のみ蛍光発色する特殊な蛍光で標識されたGTP(GTP-BODIPY)を用いることで、タンパク質とGTPの結合を蛍光強度を測定することで評価できる。ARF6はGDP/GTP交換因子(GEF)によりGTPと結合し、活性化状態となるため、ARF6とGTPの結合を評価することで、ARF6の活性を測定できる。大腸菌で作製したARF6と、ARF6のGEFであるARNO、さらにGTP-BODIPYを反応させた結果、ARNOの濃度依存的に蛍光強度が増加しため、ARF6の活性化を蛍光ヌクレオチド交換アッセイで評価することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、平成28年度の研究計画として予定していた、腫瘍血管新生と癌細胞の浸潤・転移における、ARF6のGDP/GTP交換因子(ARF6 GEF)およびGTPase活性化タンパク質(ARF6 GAP)の同定には至っていない。またARF6とARF6 GEFおよびARF6 GAPの結合領域の解明も、ARF6 GEFおよびARF6 GAPの部位欠損変異体の作製に着手しているが遅れている状態である。 一方で平成29年度に計画していたARF6抑制ペプチドを作製するために、ファージディスプレイを用いてARF6に結合するペプチドのスクリーニングを行い、71種類のARF6結合ペプチドを同定した。さらに同定したペプチドのDNA配列を大腸菌用発現ベクターに組み込み、大腸菌を用いてペプチドを作製した。さらにELISAにより、作製したペプチドがARF6特異的に結合することを確認した。また作製したペプチドのARF6抑制能をin vitroで評価するための蛍光ヌクレオチド交換アッセイの確立に成功している。さらに現在、同定したARF6に結合するペプチドのアミノ酸配列を解析し、ARF6に結合するための共通配列を同定することで、ARF6 GEFおよびARF6 GAPのARF6結合領域の同定を行っている。 したがって現在は平成28年度の計画が遅延しているが、平成29年度に計画していたARF6抑制ペプチドの作製と、ARF6抑制能の評価系の確立が終了している状況である。ゆえに全体の進捗状況としては、少し実験計画が遅延しているが、余裕のできた平成29年度に平成28年度に計画した研究を進めることで、予定している全研究計画を達成できると確信している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度において、ARF6に結合するペプチドの作製および、ペプチドのARF6抑制活性をin vitroにおいて評価する系の確立に成功した。よって平成29年度は初めに、作製したペプチドがARF6 GEFによるARF6の活性化を抑制するかを、確立した蛍光ヌクレオチド交換アッセイを用いて評価する。現在作製しているペプチドは50種類であるが、これらのペプチドがARF6抑制活性を示さない場合を考慮し、再度スクリーニングのデータからARF6結合能を持つペプチドを新たに作製する。 次に蛍光ヌクレオチド交換アッセイにおいてARF6抑制活性が見られたペプチドに、膜透過性シグナルのTAT配列を付加し、細胞透過型ペプチドに改変する。作製した細胞透過型ARF6抑制ペプチドが細胞内でもin vitroと同様にARF6の活性化を抑制することを、細胞内のGTPが結合した活性化型Arf6のタンパク質量を定量することで評価する。活性型Arf6のタンパク質量は、細胞透過型ペプチドを投与した細胞を破壊した後に、Arf6のエフェクターであるJIP3のArf6との結合領域LZIIを用いた、活性型GTP-Arf6沈降法により解析する。 またこの時同時に平成28年度で行う予定であった、血管新生と癌細胞の浸潤・転移に関するARF6 GEFおよびARF6 GAP同定を、ARF6 GEFおよびARF6 GAPのノックダウン細胞を用いた、活性型GTP-Arf6沈降法により評価する。 さらに細胞透過型ペプチドがARF6依存的な血管新生と癌細胞の浸潤・転移を抑制するかについて、それぞれヒト臍帯静脈内皮細胞(HUBEC)とヒト乳腺癌細胞(MDA-MB-231)を用いて評価する。最終的には腫瘍を打ち込んだマウスを用いて、細胞透過型ペプチドが腫瘍血管新生と癌細胞の浸潤・転移を抑制するかをin vivoにおいて評価する。
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Research Products
(1 results)