2016 Fiscal Year Research-status Report
血管平滑筋型ATP感受性カリウムチャネルのサブユニット構造の決定とその機能解析
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16K19020
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
山本 格士 佐賀大学, 医学部, 助教 (80762187)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 血管平滑筋 / ATP感受性カリウムチャネル / Proximity ligation assay |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は既に、従来の免疫組織化学染色法(蛍光二重染色法)を用い、マウス門脈平滑筋細胞においてSUR2Bタンパク質およびKIR6.1タンパク質が共発現していることを明らかにした(Yamamoto et al., Vascul. Pharmacol., 2015)。しかし、両サブユニットタンパク質が互いに近接し、カップリング(共役)しているか、否かについては未だ不明のままであった。そこで、細胞・組織における微量な内在性タンパク質の相互関係を画期的な増感技術で特異的に検出し、可視化することが可能な『Proximity ligation assay(PLA)法』を駆使し、マウス門脈平滑筋細胞における血管平滑筋型KATPチャネルの分子サブユニット構造を決定することを研究目的として研究を実施した。 使用したDuolink In Situ試薬は、検体に特異的な一次抗体の存在を高感度に検出するために、二次抗体を利用して開発されたものであり、『PLA法』のセットアップにおいて一次抗体の選択が重要となる。今回、前述の報告で使用した優れた抗原特異性を有する2種類の一次抗体(ヤギ由来抗SUR2B抗体、ウサギ由来抗KIR6.1抗体)を用いた。また『PLA法』における一次抗体の染色条件の最適化のために、まずsingle recognition(それぞれ1種類の一次抗体による1種類のタンパク質の検出)を行い、固定化、抗原回復、ブロッキング溶液、抗体希釈液、一次抗体の希釈濃度等を決定した。それらの結果を開始条件として、同一のアッセイに両方の一次抗体を使用して、目的とするアッセイの最適化を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現有する両一次抗体(ヤギ由来抗SUR2B抗体、ウサギ由来抗KIR6.1抗体)を用いた『PLA法』にて、SUR2B、KIR6.1タンパク質のカップリングを示すPLAシグナルの蛍光スポットが観察され、BALB/cマウスから採取した門脈平滑筋単離細胞においてSUR2Bタンパク質およびKIR6.1タンパク質が共局在していることが示唆された。2種類の一次抗体のうち、どちらか一方のみ、もしくは両方を省略して入れずに同様の実験を行ったが、バックグラウンドシグナルの発生は殆ど観察されなかった。 一方、当初はKATPチャネルKOマウス(SUR2-/-およびKIR6.1-/-)の門脈から得られた血管平滑筋単離細胞を用い、『PLA法』によるnegative control実験を実施する計画であったが、連携研究者から供与していただく予定であった当該マウスの継代がなされていないことが判明した。急ぎ、凍結胚からのマウス個体作製、繁殖に着手する予定としている。そのため、研究計画の一部を変更し、初年度に得られた『PLA法』での結果と比較・考察する研究内容について主として実施している(今後の研究の推進方策の項目をご参照ください)。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度と同様に、主に『PLA法』による実験系を実施する計画である。具体的には今後、下記の実験研究を行う。 (1)SUR2Bタンパク質とKIR6.1タンパク質のカップリングの有無の確証実験の実施 HEK293細胞にKATPチャネルサブユニット(SUR2BおよびKIR6.1)のcDNAを強制発現させた実験系を構築し、遺伝子導入していない細胞サンプルをnegative controlとして『PLA法』を実施する。また可能であれば、KATPチャネルKOマウス(SUR2-/-およびKIR6.1-/-)から採取した門脈平滑筋単離細胞を用い、同様の実験を実施する。さらに、マウス門脈平滑筋細胞の抽出タンパク質を用いて免疫沈降法を行い、SUR2B、KIR6.1タンパク質のカップリングの有無を明らかにする。 (2)KATPチャネルKOマウスでの解析 上記の実験結果から推定される血管平滑筋型KATPチャネルのサブユニット構造(SUR2B/KIR6.1)を基に、特定のサブユニットのみが欠損したKATPチャネルKOマウス(SUR2-/-およびKIR6.1-/-)を用い、各サブユニットに対する血管作動性因子(ノルアドレナリン、アンジオテンシンII、エンドセリン等)による細胞内シグナル伝達機序についてWTマウスの結果と比較し、その修飾作用を明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成28年度の研究成果については、既に現有する機器類で代用し実験を遂行することが出来たため、予算の節減につながった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究費(主に物品費に使用)として、有効に予算執行する予定である。
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Research Products
(3 results)