2018 Fiscal Year Research-status Report
心筋ミトコンドリアCa2+輸送異常に基づく心不全発症機序の解明
Project/Area Number |
16K19024
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
田頭 秀章 福岡大学, 医学部, 講師 (90735028)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ミトコンドリア / 心不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
最近の研究により、ミトコンドリアはATP産生の場のみならず、アポトーシスの制御、活性酸素(ROS)の生成およびCa2+貯蔵庫としての役割を担っていることが明らかにされつつあり、細胞の生死を司る重要なオルガネラとして注目されている。特に、心臓において、ミトコンドリアによるATP産生と細胞内Ca2+調節は心機能の維持に必須である。一方、心臓のミトコンドリアにおけるROSの産生異常は心不全の病態形成と密接に関わっていることから、心臓のミトコンドリアを標的とした創薬研究は、心不全などの心臓病に対する有効な治療法確立の一端になり得る可能性があり、極めて興味深い。他方、ミトコンドリアCa2+輸送体の分子実体に関する研究は急速に進展しており、ミトコンドリア内膜に存在するmitochondrial Ca2+ uniporterとmitochondrial Na+/Ca2+ exchangerが同定され機能解析が進められている。しかし、心不全の病態機序におけるミトコンドリアCa2+輸送体の役割は未だ不明である。そこで、本研究では昨年度独自に作製したミトコンドリアCa2+輸送体の遺伝子改変マウスを用いて、これらCa2+輸送体の心機能維持における役割ならびにミトコンドリアCa2+輸送異常に基づく心不全発症機序の解明を目的として検討を行った。本年度は、作製したミトコンドリアCa2+輸送体遺伝子改変マウスを使用して圧負荷心不全病態モデルを作製し、心機能に関わる心体重/体重比、血圧・心拍数・心エコーの解析を行い、野生型マウスと比較した。その結果、標的としていた遺伝子欠損マウスにおいて、圧負荷心不全病態形成が抑制され、逆に遺伝子高発現マウスでは心肥大が誘導されることを見出した。さらに、ミトコンドリアCa2+輸送体遺伝子改変マウスの二重交配マウス(欠損/高発現の各種組合せ)を作製し解析を進めている。今後、これらマウスの解析を実施する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
作製したミトコンドリアCa2+輸送体遺伝子改変マウスにおいて、圧負荷心不全病態モデルを作製し、心機能について野生型マウスと比較し、解析を行った。その結果、標的としていた遺伝子欠損マウスにおいて、圧負荷心不全病態形成が抑制され、逆に遺伝子高発現マウスでは心肥大が誘導されることを見出した。さらに、ミトコンドリアCa2+輸送体遺伝子改変マウスの二重交配を行い、ダブル遺伝子改変マウスの作製に成功し現在解析を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
ミトコンドリアCa2+輸送体遺伝子改変マウスの二重交配マウス(欠損/高発現の各種組合せ)の作製に成功したことから、今後は、ミトコンドリアCa2+輸送体の輸送バランス(Ca2+流入系vs Ca2+流出系)と心肥大・心不全形成の因果関係を明らかにするため、これらマウスの心血管機能解析を進めていく予定である。
|
Causes of Carryover |
本年度は、マウス維持と消耗品に使用したが、本格的にマウスの解析を遂行する来年度に一部の経費を繰り越すことにした。来年度より、本格的に培養実験および病態メカニズム解明のための生化学的解析を実施予定であり、実験の必要機器および消耗品に多くの経費を使用する予定である。
|
Research Products
(5 results)