2016 Fiscal Year Research-status Report
上皮間葉転換(EMT)を制御する長鎖非コードRNAの機能解析
Project/Area Number |
16K19030
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
寺島 農 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (80507434)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 上皮間葉転換 / EMT / 長鎖非コードRNA / ポリコーム抑制複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん悪性化機構として上皮細胞の性質を失い、間葉細胞の性質を獲得する上皮間葉転換(EMT)に着目して研究を推進している。長鎖非コードRNA(タンパク質をコードしない200塩基以上のRNA)は悪性化がんでの発現異常が見つかっているが、未だ機能が不明な点が多い。本研究では、長鎖非コードRNAがEMTにどのようにして関わっているのか、そのメカニズムを明らかにすることを目的として推進している。 本年度、申請者はTGF-βによって誘導されるEMTにおいて、長鎖非コードRNAの1つであるMEG3の発現が誘導されていることを見出した。さらにMEG3をノックダウンすると、TGF-βによるEMTの誘導が阻害されたことから、MEG3がEMTに関わることを明らかにした。また、1.MEG3は遺伝子発現を抑制する複合体であるポリコーム抑制複合体(PRC2)をE-カドヘリンなどの上皮マーカー遺伝子座へより強くリクルートさせる作用があること、2.MEG3は、PRC2と同様、上皮マーカー遺伝子座へTGF-β依存的にリクルートされること、3.MEG3はPRC2と結合できること、などのことから、MEG3はPRC2を標的遺伝子座へリクルートすることによって、上皮マーカー遺伝子の発現を抑制し、EMTに関わる可能性があることを示した。本研究の成果は、長鎖非コードRNAによるがん悪性化機構の理解につながると期待される。これらの研究実績は2017年、JBC誌へ報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、 1.MEG3長鎖非コードRNAのEMTへの影響を調べる。 2.MEG3によるPRC2のリクルートメント機構を解明する。 ことを計画していた。1に関しては、MEG3を過剰発現させたり、ノックダウンさせた時のEMTへの影響を調べ、EMTの過程において、MEG3が上皮の形質を失わせることに関与することをほぼ明らかにすることができた。2のリクルート機構の詳細に関しては、未だ解明できていない。しかし、研究実績の概要で述べたように、MEG3はPRC2と結合し、PRC2を上皮マーカー遺伝子座へより強くリクルートさせる作用があることから、MEG3がPRC2のリクルートメントに関わっていることが強く示唆されている。現在、MEG3のDNA結合ドメイン、MEG3のPRC2結合ドメインを同定し、それらのドメインを欠損させたMEG3変異体を用いて、MEG3によるPRC2リクルートメントの作用機序を明らかにすることを目指している。
|
Strategy for Future Research Activity |
計画にしたがって、MEG3以外のEMTを制御する長鎖非コードRNAを同定する。既に行っているRNAシーケンス解析および、ヒストンメチル化ChIPシーケンス解析から、EMTを制御する長鎖非コードRNA候補を絞り込む。そして、ノックダウン実験や過剰発現実験により、候補の中からEMTを制御する長鎖非コードRNAを同定する。多数の候補が得られた場合は、EMT誘導細胞と幹細胞の類似性を考慮し、幹細胞においてユニークな発現形式を示すか、幹細胞機能との関連が示唆されている候補を優先的に選択して効率的に進める。また本年度に引き続き、MEG3によるPRC2のリクルートメントの作用機序を明らかにすることを目指す。
|
Research Products
(5 results)