2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K19035
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
圓岡 真宏 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特定助教 (70736412)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ネクチン / 細胞間接着 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞間接着分子ネクチンは細胞間接着を介して組織・器官の構築と維持に寄与している。研究代表者らはこれまでに乳腺上皮組織において、管腔上皮細胞と二層目の筋上皮細胞との異種細胞間の接着に、ネクチン-1とネクチン-4が新規の細胞間接着装置を形成して機能的な乳腺上皮の構築に寄与することを見出している。本年度は、この細胞間接着装置が妊娠時の乳腺発達に必須のプロラクチン受容体と相互作用することで、プロラクチン受容体のシグナル伝達を促進することを報告した。また、その分子メカニズムを解析する目的で、ネクチン-4に結合するタンパク質をスクリーニングした結果、ネクチン-4の膜近傍の細胞質内領域にSOCS1が結合することが明らかになった。プロラクチン刺激時にプロラクチン受容体の下流ではJAK2-STAT5a経路が活性化されたのち、SOCS1によるJAK2のフィードバック阻害が行われる。ネクチン-4はSOCS1に結合することで、JAK2に対するフィードバック阻害を解除してプロラクチン受容体シグナル伝達を促進することを明らかにし、その結果についても報告した。さらに、乳腺以外でのネクチン依存性細胞間接着装置の機能を解析する目的で、ネクチン-1とネクチン-4の発現を可視化するレポーターマウスを構築した。しかしながら、ネクチン-4の発現は極めて限定的であったため、乳腺以外でネクチン-1とネクチン-4が細胞間接着装置を作る組織は現在のところ新規に特定できていない。ネクチン-1はネクチン-4だけでなくネクチン-3とも接着構造を作ることや、ネクチン-1同士でホモフィリックに結合する活性も有している。そこで今後はこれらの接着構造にも注目するため、ネクチン-1の条件的遺伝子欠損マウスを構築した。今後はこれらを利用してネクチン-1が介在する細胞間接着装置の役割についても解析する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、本年度はネクチン-1とネクチン-4が介在する新規の細胞間接着装置の同定と、乳腺における役割についての論文を発表することができた。さらに、その分子メカニズムについてもSOCS1という新規のネクチン-4結合タンパク質を同定することで説明し、論文発表に至った。これらの事から、分子レベル、細胞レベルでの乳腺におけるネクチン依存性細胞接着装置の役割については一定の理解が進んだものと考えられる。一方で、乳腺以外では、ネクチン-1とネクチン-4で形成される細胞間接着装置の同定には至っていない。ネクチン-1はネクチン-4だけでなくネクチン-3とも接着構造を作ることや、ネクチン-1同士でホモフィリックに結合する活性も有している。そこで今後はこれらの接着構造にも注目し、ネクチン-1の条件的遺伝子欠損マウスなどを構築したので、これらを利用してネクチン-1が介在する細胞間接着装置についての役割についても解析する。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、乳腺以外でのネクチン-1とネクチン-4で形成される細胞間接着装置を同定する目的で、それぞれの遺伝子発現を可視化するマウスを作製する予定であったが、ネクチン-4の発現部位は極めて限定的であったため、このような細胞間接着装置の同定には至っていない。ネクチン-1はネクチン-4だけでなくネクチン-3とも接着構造を作ることや、ネクチン-1同士でホモフィリックに結合する活性も有している。そこで今後はこれらの接着構造にも注目して解析を進めていく。特にネクチン-1の発現は、脳神経系で発現が高いことから、脳神経特異的な条件的・時期特異的遺伝子欠損マウスを作製して解析を進めはじめている。今後はこれらの遺伝子欠損マウスを利用してネクチン-1が介在する細胞間接着装置についての役割を解析していく。
|
Causes of Carryover |
当該年度では研究成果の発表を見送ったため、それらに関する経費を次年度に繰り越した。また、その他の経費として質量分析を外部依頼する予定であったが、それを行うことなく新規の結合タンパク質が得られたので、その分の費用を繰り越した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度では研究成果の発表を行うために使用する。また、動物実験に加え、分子生物学関連、細胞生物学関連の研究を追加して遂行する必要が生じたため、そのための経費として使用する。
|
Research Products
(2 results)