2017 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア呼吸制御機構の解析と神経変性疾患におけるその破綻
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16K19037
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
村田 等 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 講師 (90579096)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | SARM1 / ミトコンドリア / リン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリア呼吸制御に関わるSARM1のリン酸化の意義について解析を行った。前年度までにSARM1が細胞死を誘導する条件でリン酸化をうけることを見出し、そのリン酸化部位やリン酸化酵素の同定を行った。今年度はこのリン酸化によってSARM1のNAD分解活性が制御されていることを見出した。SARM1の活性化でNAD量が減少し、その結果ミトコンドリアのATP合成量が低下していた。内在性のSARM1のリン酸化を検出するためにSARM1のリン酸化抗体を作製し、解析を行った。SARM1のリン酸化は酸化ストレス環境下で亢進し、SARM1の発現抑制やリン酸化酵素の抑制でSARM1のリン酸化や細胞死は減少した。興味深いことにパーキンソン病患者由来のiPS細胞から分化誘導した神経細胞では健常者由来の神経細胞と比較して有意にSARM1のリン酸化レベルの上昇がみられた。これらの結果をまとめ、現在論文を投稿中である。 SARM1の結合タンパク質としてミトコンドリア呼吸鎖複合体のタンパク質を見出している。このタンパク質を強制発現するとSARM1の強制発現によって誘導される細胞死が緩和されたことから、SARM1がこのタンパク質との結合を介して細胞死誘導に関与している可能性がある。これまでに複数のSARM1変異体を作製しているので、これらの変異体との結合解析等からSARM1の呼吸制御機構について更に検討を進めていく。 SARM1を介した呼吸制御が神経細胞に及ぼす影響を解析するために、CRISPR-Cas9システムを用いてSARM1ノックアウト細胞の樹立を行っている。現在はSARM1の標的配列がCas9で切断されていることを確認し、シングルセルクローニング法で細胞を増殖させている段階である。シークエンス及びウェスタンブロッティング等でSARM1の発現がなくなっていることを確認し、その後の解析に用いていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SARM1のリン酸化制御について概ねその制御メカニズムを解明することができ、論文投稿に至った。SARM1の呼吸制御につながる重要なタンパク質を見出しているので、更に検討を進めていくことができる。来年度に計画している健常者及びパーキンソン病患者由来の神経細胞を用いた呼吸制御解析のためにCRISPR-Cas9の系を用いてSARM1ノックアウト細胞の樹立を行っている。SARM1の標的配列がCas9で切断されていることを確認しており、シングルセルクローニング法で細胞を増殖させている段階であるので、細胞を樹立後、解析を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
SARM1の結合タンパク質として見出している呼吸鎖複合体タンパク質の解析を重点的に解析していく。これまでに細胞死誘導活性の低いSARM1変異体等を複数作製しているので、ミトコンドリアを単離し、結合実験や呼吸活性の違いなどの比較から解析を進めていく。 現在樹立を目指しているSARM1ノックアウト細胞を用いて神経細胞の成熟過程にミトコンドリア呼吸制御が及ぼす影響について解析を進めていく。またパーキンソン病患者由来の神経細胞で明らかに細胞死が亢進していることを見出しているので、この細胞死にSARM1が及ぼす影響についても解析を行う。
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