2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K19040
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
今村 優子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 特任研究員 (50610937)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | クロマチンリモデリング因子 / Swi/Snf複合体 / 転写制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ATP依存性クロマチンリモデリング因子Swi/Snf複合体ファミリーの中でBrg1-Swi/Snf複合体とBrm-Swi/Snf複合体に着目し、二つの複合体の機能的な違いと生理学的機能を明らかにすることを目的としている。Swi/Snf複合体は、細胞増殖や分化、転写、DNA修復において重要な役割を果たしており、またこれらの複合体の構成因子は多くの癌において変異又は欠失が同定されている。本年度は、1)Brg1-Swi/Snf複合体とBrm-Swi/Snf複合体の精製、2)アンドロゲンレセプターとSwi/Snf複合体による転写制御の二点についての解析を行った。 さらに、発癌に関与するエピジェネティックな変化に着目し、ヒストンH2Aリン酸化酵素NHK1/VRK1による癌の細胞増殖制御についての詳細なメカニズムを解析し、研究分担者として論文を発表した。 1)Brg1- Swi/Snf複合体の精製を行った結果、これまでに報告のあるBrg1- Swi/Snf複合体のサブユニット以外のタンパク質が含まれており、現在タンパク質の同定を行っている。 2)Swi/Snf複合体の構成因子のうちSnf5には2つのisoformであるSnf5a又はSnf5bが存在するが、機能の違いは明らかになっていない。そこで、Snf5a又はSnf5bを含むSwi/Snf複合体を比較したところ、構成因子に明らかな違いがあった。さらに、アンドロゲンレセプターによるin vitro転写誘導系に加えたところ、Snf5a複合体では転写が活性化されたのに対して、Snf5b複合体では転写が抑えられた。今後、2つのisoformの転写における機能的な違いを解析する予定である。 3)当研究室で同定したヒストンH2Aリン酸化酵素NHK1/VRK1とそのリン酸化部位H2A T120の機能解析を行ったところ、NHK1/VRK1は癌遺伝子CyclinD1のプロモーター領域のH2A T120のリン酸化を誘導し、H3K4のメチル化を亢進させた。さらに、CyclinD1の転写が上昇することで、癌細胞増殖が亢進することを見出した(Aihara, et al. Mol. Cell, 2016)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)Brg1-Swi/Snf複合体とBrm-Swi/Snf複合体の構成因子の違いを明らかにするためにSwi/Snf複合体の精製を行った。ヒト胎腎細胞HEK293細胞又はHela細胞にFlag-HAタグを付加したBrg1又はSnf5を発現させ、Brg1- Swi/Snf複合体を精製した。その結果、これまでに報告のあるBrg1- Swi/Snf複合体のサブユニット以外のタンパク質が含まれていたことから、新規の構成因子又は転写因子である可能性があるため、タンパク質の同定を行っている。 2)悪性ラブドイド腫瘍の原因遺伝子として知られているSnf5には2つのisoform(Snf5a, b)が存在しているが、生理学的な機能の違いは明らかになっていない。そこで、精製したSnf5a又はSnf5bを含むSwi/Snf複合体を精製し比較したところ、明らかに構成しているタンパク質に違いがあった。Snf5bはSnf5aN末端領域の9アミノ酸が欠失したタンパク質であることから、複合体構成因子の安定性が低下したと考えられる。 3)Swi/Snf複合体はアンドロゲンレセプターのターゲット遺伝子の転写を活性化することが報告されている。当研究室では、in vitroにおいてクロマチン構造変換を伴うアンドロゲンによって誘導されるターゲット遺伝子であるPSAの転写を評価する系をすでに構築している。そこで、精製したSnf5a又はSnf5b複合体をアンドロゲンレセプターによるin vitro転写誘導系に加えたところ、Snf5a複合体では転写が活性化されたのに対して、Snf5b複合体では転写が抑えられた。これらの結果より、Snf5aとSnf5bに機能的な違いが存在することを見出した。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は、in vitroの実験系を用いてChIP-seqやRNA-seqなどの網羅的な解析を行うことで、Brg1-Swi/Snf複合体又はBrm-Swi/Snf複合体と協調的に働く新規の転写因子を同定し、転写制御メカニズムを明らかにする。 1)引き続き、Snf5a又はSnf5bを含むSwi/Snf複合体のin vitroにおけるアンドロゲン応答転写制御への影響を解析する。 2)本年度精製したBrg1-Swi/Snf複合体又はBrm-Swi/Snf複合体と協調的に働く転写因子の同定し、転写調節における役割を解析する。 3)Brg1とSnf5では癌細胞において変異や欠失が多数見つかっていることから、癌変異型のBrg1とSnf5を作製し、癌化におけるBrg1-Swi/Snf複合体の構成因子の変化を調べる。さらに、特異的に結合している転写因子の有無を確認する。 4)癌変異型BRG1又はSNF5高発現株を作製し、mRNAの網羅的解析を行うことで、癌細胞におけるBRG1の機能を明らかにする。また、癌変異型をもつBRG1又はSNF5のターゲット遺伝子を特定し、協調的に働く転写因子の候補因子を探索する。癌変異型BRG1又はSNF5高発現株における腫瘍形成能への影響を調べる。
|
Causes of Carryover |
本年度使用予定額は最大限かつ効率的に使用したが、その端数が次年度使用額として残っている。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の交付予定額と合わせて、本研究の推進に努めていく。
|
-
[Journal Article] Histone H2A T120 Phosphorylation Promotes Oncogenic Transformation via Upregulation of Cyclin D12016
Author(s)
Hitoshi Aihara,Takeya Nakagawa,Hirofumi Mizusaki,Mitsuhiro Yoneda,Masanori Kato,Masamichi Doiguchi,Yuko Imamura,Miki Higashi,Tsuyoshi Ikura,Tomonori Hayashi,Yoshiaki Kodama,Masaya Oki,Toshiyuki Nakayama,Edwin Cheung,Hiroyuki Aburatani,Ken-ichi Takayama,Haruhiko Koseki,Satoshi Inoue,Yukio Takeshima,Takashi Ito
-
Journal Title
Molecular Cell
Volume: 64
Pages: 176-188
DOI
Peer Reviewed / Open Access