2016 Fiscal Year Research-status Report
オートファジー流と軸索再生を負に制御するチロシンフォスファターゼ下流因子の解明
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16K19049
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
坂元 一真 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (60612801)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | オートファジー / 軸索再生 / チロシンフォスファターゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
受容体型チロシンフォスファターゼに属するPTPRσは神経細胞のコンドロイチン硫酸受容体であり、酵素活性(チロシンフォスファターゼ活性)依存的に切断後の神経軸索の再生を強力に阻害する。研究代表者は先の研究で、この現象が軸索先端部におけるオートファジー・フラックスを停止させることによるものであることを明らかにした(論文投稿中)。すなわち、あるPTPRσ基質チロシンリン酸化タンパク質が、オートファジー・フラックスを能動的に駆動していることが推察される。 平成28年度前半はこの基質分子を同定するために、研究計画に基づき、PTPRσのDA変異体を作製した。この変異体は基質分子との親和性は十分保持されているものの、酵素活性が減弱しており、安定な酵素基質複合体の形成を可能とする(Substrate trapping mutant)。このDA変異体を用い、GSTプルダウンアッセイにより、オートファジーを誘導したHEK293T細胞から、PTPRσ相互作用分子を網羅的に得た。これらPTPRσ相互作用タンパク質を質量分析計により同定したところ、いくつかのPTPRσ基質候補分子を得た。次に、これら候補分子の機能阻害実験を行い、オートファジー・フラックスに関わる分子の抽出を行ったが、有力な分子は得られなかった。 そこで、平成28年度後半より、Proximity-dependent biotin identification法(BioID法)の構築を行った。この手法では興味のあるタンパク質にBiotin ligaseを融合させて細胞に発現させる。このタンパク質と相互作用するような近傍にある分子は、Biotin ligaseにより不可逆的にビオチン化され、同定を容易にするものである。平成28年度中にこの手法の確立と安定発現細胞株を樹立することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画において当初予定していたDA変異体によるSubstrate trapping法を実施したものの、PTPRσ基質分子の同定には至らなかった。しかしながら研究戦略を速やかに変更し、研究目的の達成に有望な新しい系を構築することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
BioIDのシステム自体はすでに完成しており、種々のタンパク質のビオチン化をすでに確認している。本年度はこれらビオチン化タンパク質の同定を目指す。 また、これとは別に、PTPRσの基質分子として、あるアクチン結合タンパク質を同定している。この分子は、少なくとも複数の細胞内でPTPRσによるチロシン脱リン酸化を受けている。本分子の機能解析実験も行う。
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Causes of Carryover |
研究実施機関における既存の設備や試薬を有効活用することができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
基質候補分子の抗体やsiRNA購入に充てる
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Research Products
(5 results)