2016 Fiscal Year Research-status Report
睡眠時無呼吸による心血管病の発症・進展メカニズムの解明と予防法の確立
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16K19058
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
京谷 陽司 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (10706534)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 間歇的低酸素 / インターロイキン-6 / シクロオキシゲナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
閉塞性睡眠時無呼吸による心血管病の発症メカニズムの解明を目的として、血管平滑筋細胞の間歇的低酸素 (IH) に対する応答メカニズムを検討してきた。本件申請時から平成27年度末までにIHにおけるepiregulinのpromoter assayを行ったが、IHにより活性化される転写因子の同定には至らなかった。本年度は、予備実験から見出したcyclooxygenase (COX) と、別検討でIHとの関連が示唆されたinterleukin-6 (IL-6) に関する検討を行なった。 得られた結果は以下の通り。① COX-1およびCOX-2 mRNAは、少なくともIH暴露72サイクル (24時間) にて有意に増加した。② cell conditioned mediumにおけるprostaglandin E2は、IH暴露72サイクル (24時間) にて有意に増加した。③ IHによりIL-6は増加するため、IL-6 (100 ng/mL) にて細胞を刺激した結果、COX-1 mRNAの発現量は変化せず、COX-2 mRNAは刺激後1時間まで有意に増加した。④ IHによりIL-6は増加し、IL-6によりepiregulinおよびamphiregulin mRNAは増加するため、IHによるepiregulinおよびamphiregulin mRNAの増加に対してIL-6中和抗体を用いた検討を行ったが、IL-6中和抗体による有意な抑制効果は認めなかった。現在、IL-6とその受容体のsiRNAを用いた検討も行っている。 IHによるCOXの発現増加は血管壁における炎症を引き起こすと考えられる。また、IHにより増加したIL-6はCOXやepiregulin等の発現増加に寄与している可能性がある。そのため、COXやIL-6はIHによる動脈硬化発症メカニズムにおいて重要な役割を担っている可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題当初はepiregulinのプロモーターアッセイによりIHによる遺伝子発現制御に関わるプロモーター領域と転写因子の同定であったが、それらの同定には至らなかった。そこで、間歇的低酸素暴露に関して共同的に研究している本学の生化学講座に意見を求め、改めてIHによるepiregulin増加に関与する可能性のある分子としてシクロオキシゲナーゼとインターロイキン-6を見出すことが出来た。本来予定していた計画が進まず予定と異なるアプローチとなっているが、本研究の目的は閉塞性睡眠時無呼吸による心血管病発症・進展の鍵となる分子の同定であり、その可能性のある分子が挙っていることから極端な遅れは生じていないと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目的は、閉塞性睡眠時無呼吸による心血管病発症・進展の鍵となる分子の同定である。平成28年度に得た結果等から、閉塞性睡眠時無呼吸による心血管病発症・進展の鍵となる分子として最も可能性が高い候補はインターロイキン-6と考えている。今後、IHに起因するepiregulinの増加に対するインターロイキン-6の関与をin vitroにて検討することで、インターロイキン-6がIHによる動脈硬化に重要な役割を担う可能性を示す。次に、動脈硬化に大きく関わるマクロファージ等に対してIHやこれまでに得たepiregulinおよびインターロイキン-6といった因子の影響を検討することで閉塞性睡眠時無呼吸による心血管病発症・進展におけるインターロイキン-6の重要性を示すか、あるいはヒトや動物による検討を行うことで睡眠時無呼吸やそれによる動脈硬化とインターロイキン-6の関連性を示せればと考えている。
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Causes of Carryover |
当講座にて既に購入済みの試薬やキット等の消耗品があり、それらを優先的に使用していた。試薬などの購入の際、キャンペーン等があるものはそれを利用して出来る限り安く済ませるようにしている。また、本年度は当講座の他の研究員と共用で使用できるものが思いの外に多く、それらの購入にあたっては大学から当講座に割り当てられた経費を用いて購入していた。上記のような理由から次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在使用している不死化ヒト冠動脈平滑筋細胞の培養や研究には専用の培養液などがあり、個々の商品が非常に高価であるため、それらの購入に当てる。また、分子生物学的検討における試薬やキット等の消耗品を中心に購入する予定である。 また、ヨーロッパ糖尿病学会や薬理学会近畿部会に演題登録しているところであり、採択された場合は旅費として使用する予定である。
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