2017 Fiscal Year Research-status Report
睡眠時無呼吸による心血管病の発症・進展メカニズムの解明と予防法の確立
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16K19058
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
京谷 陽司 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (10706534)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Intermittent hypoxia / Epiregulin |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究においてepidermal growth factor (EGF) familyであるepiregulin (EREG)、amphiregulin (AREG)、neuregulin-1が間歇的低酸素暴露 (IH) における細胞増殖に関与する候補因子として研究を行ってきた。本年度の研究において、IHにおけるAREGやneuregulin-1の増加は僅かであり以後の検討は難しいと判断され、EREGに焦点を絞って行った。一方で、IL-6 mRNAがIHにより増加すること、並びにIL-6刺激によりEREG mRNAが増加することを以前に確認していたため、IHによるEREG mRNAの増加に対するIL-6の関与をIL-6 siRNAおよびIL-6 receptor siRNAを用いて検討したところ、IHによるEREG mRNAの増加がIL-6 siRNAおよびIL-6 receptor siRNAにより有意に抑制された。そこで、ELISAによりIHによるIL-6およびEREGの蛋白質としての増加を確認し、同様にELISAにてそれらの増加がIL-6 siRNAおよびIL-6 receptor siRNAにより有意に抑制されることを確認した。また、EREGはautocrineとして機能するため前駆体であるpro-EREGの発現をcell lysateを用いて確認した結果、pro-EREGもIHにより増加していることが確認された。 この他にIHによるcyclooxyrgenase-2 mRNAとconditioned medium中のPGE2の有意な変動を確認したが、それらの程度は低く、以後それらの検討を行うのは厳しいと判断した。 現在、ここまでのIHにおけるIL-6とEREGに関する新しい知見を纏めた論文に対してFEBS open bioよりacceptのメール (2018/3/30) をもらっている (論文記載のacceptの日付は2018/4/4)。また、78th American Diabetes Association Scientific Sessions (Orlando, FL) と第18回国際薬理学・臨床薬理学会議 (WCP2018)(京都) においても発表することとなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
全体を通して研究が遅れている理由の一つに予想外の細胞応答があげられる。IHによるEREG等の増加メカニズムの解明の一歩として、はじめにpromoterの活性化を考えたがその寄与は十二分なものではなかった。そこで、miRNAの関与を検討したが、その寄与も十分とは言えなかった。以上のことから、IHによるEREG mRNAの増加において、promoter並びにmiRNAの寄与は低いものと推察され、改めてEREGの発現に影響するとともにIHにより発現が変動する因子をスクリーニングしたことで、前年度途中から検討しているIL-6へと繋がっている。この一連のことが当初の計画より大幅に遅れている主要因である。 また、今年度生じた主要な遅延要因として、メーカーによる要因と日常業務による要因がある。メーカーによる要因は、メーカー指定の細胞培養液が変更になったことや購入した細胞培養液の異常を認めたために、改めて細胞培養やこれまでの結果を検証する等の必要性が生じた。また、海外からキットの輸入で1ヶ月以上待たなければならないことが2度あった。日常業務による要因は、受け持ちの講義の増加等がある。その他に論文のtransfer serviseによる投稿先の変更やeditorからのdecisionの遅さ等があった。 以上のような理由から結果的に遅延しているが、ここまでの新しい知見を纏めた論文に対してFEBS open bioよりacceptの返答 (2018/3/30) をもらっている (論文記載のacceptの日付は2018/4/4)。 今後に関して、これまでの検討によりIHによるEREG mRNA増加に対してpromoterやmiRNAの寄与が低かったことから、IHに対してEREG mRNAを増加させるメカニズムは限られてきている。そのため、IHに対する細胞応答メカニズムの一端は、比較的速やかに解明できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、IHにおけるEREG mRNA増加の分子メカニズムは未だ不明である。またIHによりIL-6の発現が増加するという本年度の結果は、睡眠時無呼吸症候群の患者にてIL-6が増加するという臨床データと合致する。このことは本実験系がより睡眠時無呼吸症候群の分子メカニズムを解明するのに有用な手段であることを示唆している。加えて、SNP等の解析がより進んでいるIL-6の発現がIHにより増加したことは、IHにおけるEREG mRNAの増加メカニズム、更にはIHに対する細胞応答メカニズムの解明の一助となるものと考えている。 本研究の目的であるOSAによる心血管病発症・進展の鍵となる分子やメカニズムの同定には、IHにおけるEREGやIL-6の発現増加メカニズムの解明は不可欠と考えており、今後この点について検討していく予定である。具体的には、まずヒストン修飾に対するIHの影響について検討したく考えている。
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Causes of Carryover |
実験の結果により計画が大きくことなったことと、平成28年度に別の研究費も所持していたことからそちらを優先的に使用にたことが主たる要因で、使用差額が生じた。 平成30年度は78th American Diabetes Association Scientific Sessionsに発表するためにアメリカのオーランドへ行く必要があり、その旅費を申請する予定である。また、確定しているものも含めてその他の学会でも発表する予定であるため、その旅費にも当てるつもりである。 研究をすすめるにあたっては、今後抗体試薬や抗体のキットを使用する予定でそれらに多額の費用が必要になると考えられるため、その費用に当てるつもりである。
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Research Products
(4 results)