2018 Fiscal Year Research-status Report
肥満モデルマウスの腸内環境及び胆汁酸代謝変動におけるビタミンD受容体の役割
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16K19062
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
石澤 通康 日本大学, 医学部, 助教 (30646542)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ビタミンD / 胆汁酸 / 核内受容体 / 肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、肥満病態における胆汁酸代謝と腸内細菌の関係性に対する、ビタミンD受容体(VDR)の役割を明らかにすることを目的とし、平成29年度までに野生型マウス、VDR欠損マウスにおいて高脂肪食(HFD32)を4週間自由摂取させる実験を行い、①VDR欠損マウスでは体重が増加しないこと、②血中コレステロール濃度はVDR欠損マウスでは増加しないこと、③糞中総胆汁酸量はHFD32で増加し、血漿中、尿中及び肝臓中の総胆汁酸量はHFD32で減少するがVDR依存性の組成変化は認められないこと、④肝臓胆汁酸合成酵素遺伝子CYP7A1 mRNAはVDR欠損で発現増加することを明らかにした。 平成30年度は胆汁中の胆汁酸組成を解析した結果、HFD32摂取時の総胆汁酸量及び組成にはVDR依存性の変化は認められなかった。野生型マウスにHFD32を8週間自由摂取させる実験を行い、4週間摂取と同様に血漿中グルコース濃度、総コレステロール濃度の増加を確認した。肝臓CYP7A1 mRNAは、4週間摂取と異なり、HFD32のみで顕著な発現増加を認めた。また、活性型ビタミンD3とリトコール酸はマウスの腸管部位選択的にVDR標的遺伝子誘導作用を有することを報告した(Ishizawa et al., IJMS, 2018)。VDR欠損マウスの肝臓ではCYP7A1が過剰となり、肥満病態で蓄積するコレステロールを胆汁酸生合成系に利用し、糞中への排泄量を増加させたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成29年度までに、4週間HFD32自由摂取による肥満病態において、糞、血漿、肝臓、尿いずれにおいてもVDR依存性の変化は認められなかったため、平成30年度では解決案の一つとして提示したHFD32を8週間自由摂取させる肥満病態を評価したが、VDR欠損マウスの繁殖数が実験目的に達しなかったため、VDR欠損マウスとの比較に至らなかった。更に、胆汁酸解析に利用中であった共同利用施設のLC-MS/MSの不調により、追加の胆汁酸組成解析が進められなかった(現在は修繕完了)。一方で、胆汁酸組成への影響を検討予定である種々VDRリガンドに関する原著論文を報告することができたので、総合すると達成状況は50%程度と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
HFD32を8週間摂取させた野生型マウスとVDR欠損マウスでの糞中胆汁酸量及び胆汁酸組成変化を検討する。抗生剤投与による腸内細菌の除去を行い、HFD32摂取による糞中胆汁酸量増加の有無を検証するとともに、HFD32摂取に伴う血中、肝臓中、尿中胆汁酸量の減少が糞中への過剰排泄によるものかどうか検証する。これらの現象におけるVDRの関与を、VDR欠損マウスと比較する。これまでに合成、報告した組織選択的或いは腸管部位選択的VDRリガンドの外来投与による胆汁酸組成変化を検証する。これらを学会にて成果報告するとともに原著論文としてまとめる。
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Causes of Carryover |
本研究課題では、高脂肪食摂取マウスの胆汁酸代謝におけるビタミンD受容体の関与の検討を目的とした。マウスへの4週間高脂肪食摂取を実施したが顕著な変化を認めず、8週間の高脂肪食摂取に予定変更した。目的の実験に要する遺伝子改変マウスの繁殖に時間を要し、更に胆汁酸分析に必要となるLC-MS/MSの感度不良が認められ、機器の感度改善に時間を要して、予定期間内のその後のデータ解析に至らなかったため。年度途中よりLC-MS/MSの感度が改善したため、次年度も引き続き、平成30年度に遂行予定であった糞、血漿、肝臓、尿、胆汁中の胆汁酸組成解析を継続する。
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