2017 Fiscal Year Research-status Report
膵β細胞におけるMek/Erkシグナルの解析と新たな糖尿病治療戦略の構築
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16K19067
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
生島 芳子 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 上級研究員 (00571366)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 2型糖尿病 / 膵島 / 膵β細胞 / Mek/Erkシグナル / インスリン分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、6週齢においてタモキシフェン投与によって膵β細胞でMek1を欠損させた膵β細胞特異的Mek1/2遺伝子欠損マウス (MIPCreERT+/Mek1f/f/Mek2KO/KO (Tmx+) マウス)を通常食及び脂肪食負荷の条件で飼育し、経時的に耐糖能試験 (ipGTT)、グルコース応答性インスリン分泌試験 (GSIS試験)、インスリン抵抗性試験 (ITT)を行なった。通常食条件下では、コントロール群に比べ明らかな耐糖能異常は観察されなかった。一方、タモキシフェン投与2週間後より高脂肪食を負荷した場合には、β細胞特異的Mek1/2遺伝子欠損マウスで随時血糖値の上昇が認められ、随時インスリン値の低下傾向も確認された。また、高脂肪食負荷19週で行なったipGTTでは、耐糖能異常が観察された。続いて、通常食・高脂肪食負荷のマウスの膵臓を摘出し、切片の免疫染色による膵島面積・増殖能・アポトーシス状態の評価を進めた。これまでのところ、通常食条件では明らかな耐糖能異常は認められていないにもかかわらず、Mek1欠損誘導後15週で解剖した膵β細胞特異的Mek1/2遺伝子欠損マウスの膵臓切片において膵島面積の低下を認めた。また、高脂肪食負荷23週で解剖したマウスの膵臓切片でも、膵島面積が低下している傾向が認められた。TUNEL染色では明らかな違いを認めなかった一方で、Mek1欠損誘導後7週の通常食マウスの膵島における増殖能評価では、膵β細胞特異的Mek1/2遺伝子欠損マウスでKi67陽性インスリン陽性細胞が減少していた。また、Mek/Erk経路の下流で膵β細胞の増殖やインスリン分泌に寄与する分子を探索するため、高脂肪食負荷した膵β細胞特異的Mek1/2遺伝子欠損マウスよりRNAシークエンス解析に向けた膵島サンプル採取を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は出産に伴う約半年の休職期間があったが、休職期間も膵β細胞特異的Mek1/2遺伝子欠損マウスのフォローアップは継続した。そして、昨年度及び今年度行った膵β細胞特異的Mek1/2遺伝子欠損マウスの長期フォローアップにより、このマウスに高脂肪食負荷することで、随時インスリン値の低下傾向・随時血糖値の上昇・ipGTTにおける耐糖能異常が生じることを観察している。さらに、今年度は上述の表現型の原因を探索するために、膵臓切片の免疫染色による解析を進めた。これまでのところ、通常食負荷・高脂肪食負荷いずれの条件下においても、膵β細胞特異的Mek1/2遺伝子欠損マウスにおける膵島面積の低下傾向を捉えている。また通常食マウス膵島における増殖能評価では、膵β細胞特異的Mek1/2遺伝子欠損マウスでKi67陽性インスリン陽性細胞が減少しており、膵島面積の低下及び高脂肪食負荷条件におけるインスリン分泌不全の一因である可能性が考えられた。さらに、膵β細胞特異的Mek1/2遺伝子欠損マウスにおいてインスリン分泌不全や膵島面積低下が生じる詳細な分子メカニズムの解明に向け、RNAシークエンス解析を行う準備も進行しており、以上から概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に引き続き、通常食及び高脂肪食負荷した膵β細胞特異的Mek1/2遺伝子欠損マウスの膵臓切片の解析を進め、膵島面積・増殖能・アポトーシスの状態やタンパク分子のリン酸化状態について評価していく。また、膵β細胞特異的Mek1/2遺伝子欠損マウスより採取した膵島を用いて、in vitroのGSIS試験・RNAシークエンス解析・遺伝子発現解析・タンパク解析を行い、in vivoで見られたインスリン分泌不全の原因メカニズムを詳細に検討していく。これらの実験により、Mek/Erk経路下流で膵β細胞維持・インスリン分泌維持に寄与する重要な分子の同定を進める。 また、インスリンシグナル非依存的にグルコース刺激によりMek/Erkシグナルが活性化するメカニズムについても、引き続き、CaMK2の関連を検討するとともに、他の候補因子の検索も進める。また、2型糖尿病モデルマウス(db/dbマウス)の膵β細胞でのMek/Erk経路の活性化状態を免疫染色・タンパク解析によって評価し、2型糖尿病患者の膵β細胞におけるMek/Erk経路の生理的な役割と意義について考察する。最後に、Mek/Erkシグナルを活性化する上流因子やMek1/2、Erk1/2、及びその下流因子を制御する薬剤投与が糖尿病モデルマウスの膵島の維持・回復や血糖値改善につながるか、培養細胞・単離膵島への添加実験、及び糖尿病モデルマウスへの投与実験により検討していきたい。
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Causes of Carryover |
今年度は第2子の出産に伴い約半年の休職期間があったため、所定の手続きに従い、産前産後の休暇または育児休業の取得に伴う科学研究費助成事業補助事業期間延長を申請した。 次年度使用額については、主に、実験動物購入及び実験動物関連消耗品と細胞培養関連消耗品、および抗体・阻害剤等の実験試薬/消耗品に使用する。
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Research Products
(3 results)