2016 Fiscal Year Research-status Report
幹細胞遺伝子治療を実現する非伝播型エピソーマルRNAウイルスベクターの創製
Project/Area Number |
16K19069
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
牧野 晶子 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 特定助教 (30571145)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 幹細胞遺伝子治療 / ボルナウイルスベクター / X-SCID |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、伝播に必須の遺伝子を欠損しても核でエピソーマルな状態のまま持続的に遺伝子を発現できるボルナウイルスの特徴を活かし、難治性遺伝子疾患の幹細胞治療を実現する長期安定型遺伝子発現デリバリーシステムを構築することを目的とする。 平成28年度においては、幹細胞遺伝子治療のターゲットであるX連鎖重症複合免疫不全症(X-SCID)のモデルラットへの導入を目指し、原因遺伝子であるIL2RG(ヒトまたはラット)を発現する伝播型および非伝播型のボルナウイルスベクターを作製した。X-SCIDはX染色体上のサイトカインレセプター共通γ鎖(IL2RG)の変異により、T細胞とNK細胞がほとんど産生されずB細胞が機能不全を起こす難治性遺伝子疾患である。作製したIL2RG発現ボルナウイルスベクター感染細胞では、IL2RGが恒常的に発現しておりウイルスの配列上に変異はなかった。これらのベクターは今後、モデルラットへのex vivo投与に用いる予定であり、現在はラットを用いた骨髄細胞からのCD34陽性細胞の単離を試みている。 ボルナウイルスに抵抗性を示すマウスに順化したウイルスを細胞-細胞間継代により作製し、配列を解析することで、マウスへの順化に重要なウイルスの候補遺伝子配列を同定した。さらにマウス順化候補遺伝子を持つウイルスを人工合成した。ボルナウイルスベクター感染個体でのウイルスの体内分布を評価するためのツールとして、GFPとルシフェラーゼ遺伝子を発現するベクターを作製した。これらのベクターを用いることでマウスおよびラットにおけるボルナウイルスの感染動態を評価することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
X-SCIDを治療標的とした幹細胞遺伝子治療評価については、ベクターの作製および実験動物を用いた実験系の評価等、順調に進展している。一方でiPS細胞を用いたベクターの安定性の検討については、次世代シーケンサーを用いたウイルスRNA配列評価の実験系立ち上げに時間がかかっており当初の予定より少し遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
GFPおよびルシフェラーゼ発現ボルナウイルスベクターを用いて、細胞移植、静脈内投与、脳内投与をおこなった場合の、ベクターのラットおよびマウスの体内分布を評価する。X-SCIDを治療標的とした幹細胞遺伝子治療評価については、CD34陽性細胞へのベクターの導入および移植をおこない、移植個体での免疫応答を評価する。またIL2RG発現ボルナウイルスベクターを同様にCD34陽性細胞へ感染させ、X-SCIDモデルラットへの移植をおこない、T細胞への分化、B細胞、NK細胞へのウイルス感染を評価する。ボルナウイルスベクター感染幹細胞における、ウイルスのRNA配列の安定性をMiSeqまたはMinIONを用いて検討する。
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Research Products
(3 results)