2016 Fiscal Year Research-status Report
浸潤性肺腺癌組織亜型に関わるエピジェネティクス変化の解明と個別化治療への応用
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16K19082
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
坂部 友彦 鳥取大学, 医学部, 助教 (50639747)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | solid component / micropapillary component |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、浸潤性肺腺癌内に混在している病理組織亜型の各癌細胞内におけるエピジェネティクス修飾に着目した解析を行うことで、各組織亜型に特異的なヒストン修飾を明らかにして、各組織亜型の形成メカニズムを解明し、予後不良なhigh grade亜型を標的とした治療法の開発を行うことを目的としている。 鳥取大学附属病院において2004年1月から2017年2月に外科切除されたStage Iの肺腺癌516例について、優勢組織亜型解析を行った結果、lepidic predominantが145例 (28.1%)、acinar predominantが197例 (38.2%)、papillary predominantが137例 (26.6%)、micropapillary predominantが0例 (0%)、solid predominantが37例 (7.2%)であった。lepidic、acinar、papillaryをlow grade亜型、micropapillary、solidをhigh grade亜型に分類し、臨床病理学的検討を行ったところ、性別 (p<0.014)、喫煙有無 (p<0.001)、分化度 (p<0.001)と相関を示すことが明かとなった。また、質量イメージング解析に使用するサンプルとして、2014年以降の164例の組織亜型について、ヘマトキシリン・エオシン染色標本を用いたコンポーネントの再評価では、79症例 (48.2%)の腫瘍内にhigh grade亜型が混在しており、high grade亜型の存在は、性別 (p<0.015)、喫煙有無 (p<0.004)、stage (p<0.002)、分化度 (p<0.001)と有意な関連を示すことが明かとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Stage Iの浸潤性肺腺癌において、micropapillary亜型を一定量以上含む検体は少なく、特に一つの腫瘍内にmicropapillaryとsolidの両方のhigh grade亜型を一定割合以上含んだ検体が稀であったため、症例の見直しによる質量イメージング解析に適したサンプルの選択に時間を要してしまい研究実施に遅れが生じてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度前半は、これまでに選定したhigh grade亜型を含んだ検体を用いてイメージング質量顕微鏡によるヒストン修飾解析を行うことで、各組織亜型に特徴的なヒストン修飾を同定する。また、同定したhigh grade亜型に特長的なヒストン修飾については、クロマチン免疫沈降と次世代シークエンサーを組み合わせたChIP-Seqによって、ヒストン修飾が生じるゲノム領域や修飾酵素を特定する予定である。ChIP-Seqでの解析には、多量のサンプルボリュームが必要になることが予想されるので、平成29年度後半は、ChIP-Seq用サンプルの回収と並行して、同定したhigh grade亜型形成に関わる因子のin vitro、in vivoでの検証実験に必要になるヒト/マウス肺腺癌細胞株や発癌モデルの準備も同時に進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
質量イメージング解析に適したhigh grade亜型を一定割合以上含んだ検体を集めるのに時間を要してしまったために、イメージング解析、ChIP-Seq解析が出来ず、使用額が予定より下回った。 肝組織からの細胞回収の為のコラゲナーゼ還流法の技術習得に時間を要し、また当初の想定よりも回収できた細胞が少なかったために、網羅的な解析に必要な細胞数を十分に確保ができず、これらの解析が実施出来なかったために使用額が予定より下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度前半に実施する質量イメージング解析、ChIP-Seq解析に予算を当てると共に、ヒト/マウス肺腺癌細胞株の培養や発癌モデルの準備に必要な培地などの細胞培養用試薬、培養用プラスチック製品などの消耗品を物品費として使用する。
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