2016 Fiscal Year Research-status Report
胃癌リンパ節辺縁洞を起点とする転移性ニッチの段階的形成と癌間質細胞相互作用の解明
Project/Area Number |
16K19088
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
菊地 良直 帝京大学, 医学部, 講師 (90512260)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 転移前リンパ節 / リンパ管新生 / 癌関連線維芽細胞 / periostin / miR-21 / エクソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、胃癌のリンパ節転移の各段階、具体的には、癌細胞の①辺縁洞到達、②辺縁洞からリンパ節内部への進展、③リンパ節内占拠病変の形成、④上流リンパ節への転移、などの段階で、metastatic nicheの形成とこれに関与するリンパ管新生や癌関連線維芽細胞、B細胞などの機能を解明することが目標である。まず、胃癌手術症例を抽出し、リンパ節転移陰性例では、①原発巣リンパ管侵襲(-)、②原発巣リンパ管侵襲(+)の所属リンパ節。リンパ節転移陽性例では、③転移リンパ節と同一領域内の転移(-)の所属リンパ節、④辺縁洞にのみ癌細胞が侵入した転移リンパ節、⑤癌細胞がリンパ節内を占拠した転移リンパ節に細分類した。D2-40による免疫組織化学的検討では、リンパ節内部のリンパ管新生は癌細胞が辺縁洞に到達してから有意にみられた。辺縁洞到達前は、premetastatic nicheとして辺縁洞リンパ管内皮に活性化があると予想し、解析を進めている。一方、胃癌原発巣の組織化学的検討で、癌間質miR-21の過剰発現がリンパ節転移と有意に相関することは既に明らかにされており、加えて早期浸潤癌の間質periostinの発現がリンパ節転移と有意に相関する結果も得た。浸潤癌間質に発現するmiR-21およびperiostinが、所属リンパ節の早期premetastatic nicheの形成に関与していることを予想し、癌間質線維芽細胞由来のエクソソームに内包されているmiR-21およびperiostinに着目している。まずマウス線維芽細胞株(NIH3T3)の培養細胞培養上清中からのエクソソームを抽出し、エクソソーム内miR-21をデジタルPCRで定量できることを確認した。PeriostinおよびmiR-21の遺伝子導入NIH3T3を作製し、これらのエクソソームの転移前リンパ節に対する機能解析を行う方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
胃癌手術材料の郭清リンパ節を細分類した免疫組織化学的検討で、リンパ管新生の評価は順調であったが、転移前のリンパ節辺縁洞のリンパ管内皮の活性化に関与していると思われるインテグリンの免疫組織化学的検討で評価可能な免疫染色ができていないため、辺縁洞リンパ管内皮の解析がやや遅れている。また、NIH3T3に対するmiR-21のレンチウイルスによる遺伝子導入が順調でなかったため機能解析に若干の遅れがでているが、予定通り次年度にはマウス胃壁移植などの解析も可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
所属リンパ節の免疫組織化学的検討では、リンパ節辺縁洞のリンパ管内皮の活性化をより詳細に評価する。これに関与していると思われるインテグリンの各種抗体で、過去の報告で良好な結果が得られているものをさらに検索し、必要であればin situ hybridizationによるmRNAの評価も検討する。機能解析に関しては、癌間質線維芽細胞に由来するエクソソーム内のmiR-21およびperiostinに注目し、これらを内包するエクソソームが転移前所属リンパ節にどのように作用するかを解析する予定である。NIH3T3に遺伝子導入を行い、そのエクソソーム内で標的因子が過剰に含有されていることを確認した上で、培養細胞条件下でリンパ管内皮に作用させて機能解析を行う。in vivoでは、エクソソーム抽出液をマウス胃壁に注射し、所属リンパ節の組織学的評価を行い、さらにはOCUM-2MLNなどのスキルス胃癌細胞株を用いた同所移植モデルを用いてリンパ節転移が誘導されるかを検討する方針である。
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Causes of Carryover |
新規に購入した免疫組織化学的検討に用いる一次抗体に関して、初期使用前の条件検討を慎重に行った結果、購入を予定していた抗体の再評価などが必要となり、購入が遅れたことから抗体購入予定額に残額が生じた。また間質因子の解析において、当初想定していたmicro RNAおよびタンパクの解析に加えて、これらを内包するエクソソームの解析を行う方針となったことから、想定していたreal time PCRやwestern blotting法などの解析手法に加えて新たにデジタルPCRによる解析を行う方針となった。手技確立のためデジタルPCRによる解析を先行させたため、この解析に必要な試薬料と当初解析に予定していた試薬料の差分が、残額として生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度に購入を予定していた免疫組織化学的解析用の一次抗体に関して、再評価した上で引き続き購入予定としてる。また、新たに解析手法として採用する方針としたデジタルPCRに関しては、解析手技が安定してきたため、引き続きデジタルPCR用の試薬購入に使用するとともに、当初予定していた実験手法に必要な試薬の購入にも使用する予定である。
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