2017 Fiscal Year Research-status Report
胃癌リンパ節辺縁洞を起点とする転移性ニッチの段階的形成と癌間質細胞相互作用の解明
Project/Area Number |
16K19088
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
菊地 良直 帝京大学, 医学部, 講師 (90512260)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 転移前リンパ節 / リンパ管新生 / 癌関連線維芽細胞 / periostin / miR-21 / エクソソーム / 中皮-間葉転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究成果より、胃癌リンパ節転移では辺縁洞到達前の転移前ニッチとして辺縁洞リンパ管内皮に活性化があると予想し、その作用因子としてmiR-21とperiostinに着目している。Tissue microarrayを用いたin situ hybridization法あるいは免疫染色による判定量的解析では、胃癌に加えて、膀胱癌・肺癌・膵癌などで間質miR-21やperiostinの過剰発現がリンパ節転移と有意に相関する結果を得た。 現在利用できるリンパ管内皮細胞株は存在しないため、まず中皮細胞株(Met-5A)を用いた機能解析を進めた。胸膜あるいは腹膜中皮細胞は同部リンパ管内皮細胞と組織構造的に連続性があり、D2-40陽性など免疫形質にも類似性がある。Met-5Aに未熟型miR-21を遺伝子導入すると、E-cadherinの発現は減弱し、vimentinやαSMAは発現が増強した。遊走能と収縮能の上昇も確認した。これは腹膜播種において重要とされる中皮-間葉転換に相当する形質変化であり、リンパ節転移巣では辺縁洞リンパ管内皮に同様の変化が誘導されている可能性がある。 原発巣由来のmiR-21は細胞外分泌小胞の1種であるエクソソームに内包され、辺縁洞リンパ管内皮に作用する可能性を考え、エクソソーム内嗜好性のタグを有するmiR-21 mimicを遺伝子導入したマウス線維芽細胞株(NIH3T3)を作製した。この細胞(NIH3T3-miR-21-mimic)とリンパ管内皮初代培養細胞の共培養、およびNIH3T3-miR-21-mimicのエクソソームを回収しリンパ管内皮初代培養細胞に作用させる方法で、中皮細胞でみられたものと同様の変化が誘導されるか検討する予定である。Periostinは既にNIH3T3に遺伝子導入した細胞株を作製しており、同様の実験を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
リンパ節辺縁洞に存在するリンパ管内皮の活性化を評価するために、当初はインテグリンの各種抗体を用いた免疫組織化学的手法によるアプローチを試みたが、良好な結果が得られなかった。作用因子としてはmiR-21およびperiostinに着目していたが、利用できるリンパ管内皮細胞株が存在しないため、細胞を用いた機能解析に遅れが生じた。遺伝子導入が順調でなかったこともあり、進捗状況はやや遅れている。 一方で、リンパ管内皮細胞と中皮細胞の類似性より、初期段階の実験として中皮細胞株を用いた機能解析を行い良好な結果が得られている。これは同様の結果がリンパ管内皮細胞でも得られる可能性を示唆しており、引き続きリンパ管内皮初代培養細胞を用いた実験を行う方針とした。
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Strategy for Future Research Activity |
リンパ節転移における転移前ニッチ形成に関与するリンパ管内皮細胞の活性化を詳細に検討する。作用因子としては、miR-21およびperiostinに着目しており、これらの遺伝子導入を行ったNIH3T3細胞株とリンパ管内皮細胞の共培養および抽出エクソソームのリンパ管内皮への作用によって、リンパ管内皮に癌促進的形質が誘導されるかを検討する。現時点でin vitroでの実験で良好な結果が得られている。さらにin vitroでの実験を行い良好な結果が得られた場合には、次の段階として、NIH3T3などの間質細胞やOCUM-2MLNなどの癌細胞、あるいはこれらから抽出したエクソソームをマウスの胃壁に移植し、所属リンパ節の変化を組織学的に解析するin vivoでの実験を行う方針である。リンパ節辺縁洞のリンパ管内皮を起点とする転移性ニッチの段階的形成機序を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
<理由> 初年度に免疫組織化学的検討に用いる1次抗体に初期使用前の条件検討を慎重に行った結果、購入を予定していた抗体の再評価などが必要となり、抗体購入予定額に残額が生じた。またデジタルPCRによる解析を先行させたことにより生じた当初予定試薬料との差分があり、残額が多く生じた。本年度は比較的順調に培養細胞を用いた実験を実施することができたため、比較的高額な細胞株の購入や培養細胞を用いた機能解析を行うための支出があり、前年度繰り越し分の費用も使用することとなったが、残額が多かったため次年度使用額が生じている。 <使用計画> 引き続き新規に使用する抗体を購入する予定である。今後はエクソソーム内因子を扱うため、1サンプル当たりの費用がreal time PCRより高価となるデジタルPCRの解析が主軸となり、培養細胞を用いたmicroarray解析やマウス移植実験を行う予定であることから、本年度生じた残額も使用する予定である。
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