2018 Fiscal Year Research-status Report
胃癌リンパ節辺縁洞を起点とする転移性ニッチの段階的形成と癌間質細胞相互作用の解明
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16K19088
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
菊地 良直 帝京大学, 医学部, 講師 (90512260)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 転移前リンパ節 / リンパ管新生 / 癌関連線維芽細胞 / periostin / miR-21 / エクソソーム / 中皮-間葉転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究成果より、癌間質miR-21やperiostinの過剰発現がリンパ節転移と有意に相関する結果を得ている。 miR-21のリンパ管内皮への作用を検討するために、まず中皮細胞株(Met-5A)への作用を調べた。未熟型miR-21を遺伝子導入したところ、中皮間葉転換が確認された。次にリンパ管内皮でも同様の現象が起こるか確認するために、エクソソーム内嗜好性のタグを有するmiR-21 mimicを遺伝子導入したマウス線維芽細胞株(NIH3T3)を作製し、リンパ管内皮の初代培養細胞と共培養を行った。vimentinの変化はみられなかったが、E-cadherinの発現減弱とαSMAの発現上昇がみられ、中皮間葉転換と同様の現象が認められた。播種性転移では中皮細胞が中皮間葉転換によって癌関連線維芽細胞(以下CAF)に動員されるため、リンパ節転移巣でもリンパ節内リンパ管内皮がCAFに動員される可能性が示唆された。 リンパ節転移巣を用いた免疫組織学的研究では、リンパ節内のリンパ管は癌細胞が辺縁洞に到達した段階で優位に増加することが示されたので、miR-21のリンパ管内皮に対する増殖亢進作用を検討したが、Ki67の免疫染色では優位な差はみられていない。 一方、リンパ節転移巣を用いたperiostinの免疫染色では、癌細胞が辺縁洞に到達した転移リンパ節では、辺縁洞をなすリンパ節皮膜の線維性組織に発現が認められる。またリンパ節内の広い範囲で癌細胞が浸潤したリンパ節では、間質にびまん性にperiostinの発現が認められる。Periostinは分泌タンパクであるため、その詳細な発現局在を調べるために、今後はin situ hybridization法により検討する。またperiostin遺伝子が導入されたNIH-3T3を用いて、periostinのリンパ管内皮への作用を調べる方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初、リンパ節辺縁洞に存在するリンパ管内皮の活性化を評価するために、インテグリンの各種抗体を用いた免疫組織化学的手法によるアプローチを試みたが、良好な結果が得られなかった。作用因子としてはmiR-21およびperiostinに着目していたが、遺伝子導入が順調でなかったため、細胞を用いた機能解析に遅れが生じている。miR-21のリンパ管内皮細胞への作用に関する実験では良い結果が得られているが、現段階では増殖能との関連性が示されず、メカニズムの解明には至っていない。miR-21の機能解析を先行させたので、periostinに関する機能解析が遅れおり、同様の実験手法でperiostinの機能解析も進める方針である。
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Strategy for Future Research Activity |
エクソソーム内miR21のリンパ管内皮への増殖亢進作用に関して、Ki67の免疫染色では証明出来ていないが、今後はMTT assay等を用いてより詳細に検討する。Periostinのリンパ管内皮への作用も同様に検討し、間葉系マーカーの亢進や増殖亢進に関する機能を検討する。 対象サンプルを胃癌のリンパ節転移巣に加えて乳癌のセンチネルリンパ節も検討し、より厳密に原発巣の影響を最初にうけるリンパ節での評価を並行して行う方針である。 胃癌のTCGA公開データを用いて、miR-21およびperiostinの発現とリンパ節転移との相関関係を検討すると共に、早期胃癌のリンパ節転移に関連するその他の因子の同定も試みる。
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Causes of Carryover |
細胞実験を用いた機能解析に遅れが生じていたため、試薬等の消耗品を購入する予定であった分が使用できなかった。引き続き細胞実験等の機能解析を行い、試薬の購入に使用する予定である。
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