2016 Fiscal Year Research-status Report
鋸歯状病変、特に鋸歯状腺腫を由来とする大腸癌の発生経路の解明
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16K19097
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
橋本 大輝 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, がん専門修練医 (40773875)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分子病理学 / 大腸癌 / carcinogenesis / Wntシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は大腸癌の前駆病変である鋸歯状病変から大腸癌への進展経路を探索する研究である。平成28年度において、報告者は鋸歯状病変の一つであるSessile serrated adenoma/polyp (SSA/P)からの進展メカニズムを解明するために、大腸癌への進展過程の端緒と考えられる、SSA/P with dysplasiaと呼ばれる病変を蒐集し、臨床病理学的および分子病理学的検討を行った。遺伝子解析の結果、SSA/P with dysplasiaの半数以上にWNT pathway遺伝子の変異を認め、そのうちの多くはRNF43遺伝子変異であった。一方、異型のないSSA/PではWNT pathway遺伝子変異は稀であった。この結果から、WNT pathwayの活性化はSSA/Pにおける異型の出現に関与しており、そのメカニズムの大部分はWNT pathway 遺伝子の変異であることが示唆された。また、SSA/P with dysplasiaにおいてMLH1タンパク質発現消失例と発現保持例では、年齢、性別、好発部位、RNF43変異パターンにおいて異なる特徴を有していた。これより、SSA/P with dysplasiaはMLH1タンパク質の発現ステータスによって2つの異なるサブグループに分けられることが示唆された。以上の所見から、SSA/Pから大腸癌へと至る進展経路には、MLH1のサイレンシングとRNF43変異を獲得しMLH1発現の消失したSSA/P with dysplasiaを経てBRAF変異型マイロサテライト不安定性陽性大腸癌へ進展する経路、およびMLH1のサイレンシングなしにWNT pathway遺伝子変異を獲得しMLH1発現の保たれたSSA/P with dysplasiaを経てBRAF変異型マイクロサテライト不安定性陰性大腸癌へ進展する経路という2つの経路の存在が想定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サンプルの蒐集および臨床病理学的・分子病理学的解析が終了し論文投稿に至ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
上記研究で行えなかったSSA/Pの異型のある部分と異型のない部分をレーザーマイクロダイセクション法を用いて別個に解析し、一つの検体内でWNT pathway遺伝子変異による腫瘍進展を示すことを計画している。また、他の鋸歯状病変の進展メカニズムの解明のためにサンプル蒐集を行っている。
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Causes of Carryover |
当初想定より順調に実験が進み、追加実験が少なく済んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
レーザーマイクロダイセクション用試薬およびin situ hybridization用試薬を中心に、消耗品購入に充てる。
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