2016 Fiscal Year Research-status Report
健康長寿を目指す高齢者心疾患における治療および予防のための糖鎖関連老化因子の解明
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16K19098
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
板倉 陽子 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (30582746)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 糖鎖プロファイル / 心疾患 / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者の増加につれ、重篤な加齢疾患を含む患者の数は増加傾向にある。加齢に伴う様々な機能低下の中で、他臓器に影響を及ぼす心臓の役割は非常に大きい。しかし、心臓は再生能力の低さなど治療による根治は難しく、まだまだ課題が多く残されている。根本的な解決のためにまずは各組織の機能低下における状態の把握と原因の解明が必須である。本研究では、細胞接着や情報伝達など様々な生体内機能に深く関わる糖鎖に着目し、心臓由来細胞に特異的な糖鎖プロファイルを解析し、老化に伴う心臓の質的変化を調べることを目的とした。 平成28年度は、個体老化を明確にするための試料作製および解析方法の確立を目指し、解析に最適なマウス心臓組織切片の作製を行った。老化モデルの対象として、当施設で保有する老齢マウスおよび購入した若齢マウスの心臓を丁寧に剥離し、脂肪や血液由来細胞を極力含まず、心臓の構造を保った状態で臓器を取得することに注力した。さらに、臓器の固定期間ならびに薄切の向き・厚さ・切り出し位置などを詳細に検討し、目的領域の最適な糖鎖プロファイルの取得を目指した。 その結果、老齢マウスの心臓は肥大するとともに、構造維持が難しく(軟化の傾向にあった)、脂肪の除去や形状維持のために若齢マウスよりも心臓の剥離に時間を要した。糖鎖解析のための組織切片の作製においては、水平を保った状態で心尖部から心房を確認できるよう薄切し各領域(組織)を切り出すことで、目的部位を明確にし、回収量をコントロール可能とした。心臓の糖鎖解析には、切り出す領域が想定していたよりも2倍量必要であり、糖鎖プロファイルの解析において腎臓などよりもシグナル強度が弱いことが明らかとなった。 以上のことをふまえ、引き続き、世代のことなるマウス心臓における部位特異的な糖鎖プロファイルを取得し、加齢に伴う糖鎖変化を比較解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の目標は、心臓組織切片を用いた糖鎖プロファイル情報の取得および加齢に伴う糖鎖変化の解析である。想定していたよりも糖鎖プロファイルにおけるシグナル強度は低く、正確な比較解析のため、高いシグナル強度を取得するための検討に時間を要したが、部位特異的な情報を得るに至った。また、世代に応じた糖鎖プロファイルデータの取得および切片の免疫染色データも蓄積している。一方、世代に応じた変化を明確にするためには、タンパク質などの様々な比較によるさらなる解析が必要であり、個体差を考慮した詳細なデータを蓄積する必要がある。よって、目標である糖鎖情報の取得および試料作製における検討は進んでいることから、現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度以降は、加齢に伴う糖鎖変化を明確にするため、世代ごとの実施数を増加し、引き続き糖鎖プロファイルデータを蓄積する。どのような段階でどの程度糖鎖が変化しているかなど、染色による糖鎖発現の確認なども含めより詳細な変化を検討していく。また、必要に応じて、マウスの成熟に伴ったさらなる世代の解析も検討する。さらに、個体の変化(体重、心重量など)に加え、既存の老化マーカーなどによる解析を実施する。一方、循環器疾患および心疾患においてはヒトとマウスでは異なるため、対応する疾患および症状を考慮し、モデルマウスを活用した疾患と糖鎖の関連性についても検討していく。そのほか、加齢に伴う疾患との関係が想定される抗体を用いて、切片を免疫染色し、実際の糖鎖プロファイルとの相関を検討する。
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Causes of Carryover |
申請時に、当該研究で得られた研究成果を国際学会にて発表する予定でいたが、条件検討およびデータの取得を慎重に行い予定よりも時間を要したため、次年度以降に成果報告をすることに変更した。そのため、海外への渡航費として計上していた旅費が残予算として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度に海外において成果報告を予定していたが次年度へと変更したため、残予算は主に国際学会における旅費および参加費に使用する予定である。また、前年度に得られた糖鎖情報をもとに切片の染色実験による詳細な発現確認を実施するため、抗体やレクチンなどの試薬購入に使用する。
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Research Products
(2 results)