2017 Fiscal Year Research-status Report
γδT細胞の機能を決定するTCR シグナル経路の解明
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16K19102
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
室 龍之介 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (80761262)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | γδT細胞 / IL-17 / T細胞シグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、IL-17産生型gdT細胞の分化を制御する動作原理の理解を目指し、gdTCR下流で機能するチロシンキナーゼであるZap70とSykの役割について解析を行った。初年度の研究から、Zap70とSykはともにTCR刺激依存的に活性化されるが、遺伝子欠損マウスの解析からSykがgdTCRシグナル伝達を担う重要なチロシンキナーゼであることが示唆された。さらに、IL-17産生型gdT細胞の分化はSyk依存的に誘導されることがわかった。 初年度の解析結果に基づき、Syk依存的TCRシグナルが制御する下流分子の同定を試みた。B細胞おいて、SykはPI3K/Akt経路の活性化に必要であることから、gdT細胞におけるPI3K/Akt経路の役割に着目した。Sykを欠損するgdT細胞ではTCR刺激依存的なAKTのリン酸化が有意に減少したが、Zap70を欠損するgdT細胞では正常であった。また、PI3K阻害剤であるIC87114存在下で胎仔胸腺を培養した結果、IL-17産生型gdT細胞の絶対数は劇的に減少したが、IFNg産生型gdT細胞の絶対数に変化は認められなかった。 IL-17産生型gdT細胞におけるPI3Kの役割をより詳細に検討するために、PI3K触媒サブユニットであるp110d/p110g二重欠損マウスをCRISPR/Cas9法によって作成した。このマウスから得たgdT細胞はTCR刺激依存的なAKTの活性化が減弱していたがERKのリン酸化は概ね正常であった。胸腺内のgdT細胞の分化を解析した結果、gdT細胞の総数に変化は認められなかったが、IL-17産生型gdT細胞が完全に消失していることがわかった。一方、IFNg産生型は増加することがわかった。 以上の結果から、gdT細胞ではSykがPI3K/Aktを活性化し、gdT細胞のIL-17産生能獲得に必須であることが明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Sykの下流分子としてPI3K/Aktに着目し、PI3K欠損マウスの解析や阻害剤を用いた解析を完了させた。その結果、SykおよびPI3KがgdT細胞の重要な制御因子であることを明らかにすることができた。したがって、当初の目的であったgdT細胞の機能を決定づけるTCRシグナル経路について高い解像度をもって解析することができた。 本研究ではCRISPR/Cas9法を用いることによって、迅速かつ高効率にPI3K二重欠損マウスを作成することができたため、大幅に時間短縮することができ、余裕を持って研究に取り組むことができた。 本研究から、gdT細胞の分化を制御する抗原受容体シグナルは、abT細胞におけるTCRシグナル経路よりも、B細胞抗原受容体シグナルに類似している可能性が示唆された。このような非典型的TCRシグナル経路は現在までマウスでは報告されておらず、今後さらなる研究が必要であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
Sky欠損マウスを用いた解析から、IL-17産生型gdT細胞の分化に必要であることは明らかにされた。しかし、Syk欠損マウスは新生仔致死であるために、現在までの解析は新生仔胸腺におけるgdT細胞のみを対象としてきた。したがって、今後は成獣期におけるgdT細胞の分化や末梢組織のgdT細胞を解析する必要がある。 現在、Syk floxマウスと数種類のCre発現マウスラインを交配し、免疫系細胞でのみSykを欠損するマウス(Syk cKOマウス)の作成を進めている。本マウスを用いて、生理的条件下におけるgdT細胞の表現系を調べるとともに、Syk cKOの炎症応答を解析する予定である。
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