2017 Fiscal Year Annual Research Report
上皮間葉転換におけるオートファジーの病態生理学的位置づけの解明
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16K19103
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
吉田 剛 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 日本学術振興会特別研究員 (00732405)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 上皮間葉転換 / 癌幹細胞 / TGF-β / オートファジー / 基底オートファジー / 舌癌 / CRISPR-Cas9 / 新規オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
上皮間葉転換(epithelial-mesenchymal transition; EMT)は、個体発生における細胞遊走や慢性炎症における線維化にも関わっている一方で、浸潤・転移を呈する難治性腫瘍の治療標的という観点からも注目視されている。また、腫瘍増大に対して血管新生が追い付かない腫瘍組織は、癌細胞が低栄養・低酸素状態に陥りオートファジーが誘導されやすい微小環境と言える。そこで申請者らは、ヒト頭頚部扁平上皮癌である舌癌細胞におけるオートファジーとEMTとの関連性について検証を行ってきた。舌癌細胞株HSC-4およびSASにおいてTGF-β依存的にEMT誘導転写因子Slugが活性化されEMTが生じるが、その際にオートファジー-リソソームの流れ(autophagy flux)の影響を除外する目的で、TGF-β処理と同時にオートファジー阻害剤であるクロロキンやバフィロマイシンA1によりオートリソソームにおけるタンパク質分解を抑制したところ、Slugやビメンチンの発現増加がTGF-β単独処理と比較して有意であった。本結果は、Slugやビメンチンがオートファジーにより定常状態で分解されている可能性を示唆する。実際に、野生型MEFと比較して従来型オートファジーを起こさないAtg5ノックアウトMEFではSlugの発現量が高かった。そこで、SAS細胞をクロロキンで処理した際のSlugおよびビメンチンを検証したところ、漸時的に発現増加を認めた。また、CRISPR-Cas9システムを用いてオートファジーに必須の分子であるAtg5やAtg7が欠損した舌癌細胞株HSC-4およびSASを作製したところ、予想に反して、TGF-βに対する感受性は維持されEMTが誘導されたことから、Ulk1やRab9などが関与するAtg非依存性オートファジー(新規オートファジー)との関連性が示唆された。
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