2018 Fiscal Year Research-status Report
ヒト単球上の潜在型TGF-βの発現調節機構とその発現比率による単球の機能差の解明
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16K19105
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
仲山 美沙子 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (00510306)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 免疫反応 / ワクチン / TGF-β / インフルエンザウイルス / 動物モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫抑制能を有するTGF-βはLatency-associated peptide(LAP)に包まれた潜在型として存在する。LAPを単球系セルラインTHP-1に遺伝子導入した結果、細胞内染色によりLAP産生が確認され、試験管内の実験を行うために有用であると考えられた。同時に、細胞表面への発現を誘導するには、さらに複数の遺伝子を導入する必要があることも分かった。また、末梢血細胞のLAPの細胞表面への発現は、単球以外に顆粒球にも観察され、単球の細胞表面への発現と相関することが分かった。これはLAPの発現調節機構が単球特異的な現象ではないことを示唆した。 末梢血単球上のLAPの発現比率の高いサル、LAP発現比率の低いサルにインフルエンザウイルス不活化ワクチンを0,4週に皮下投与したところ、一回目のワクチン接種から4,8週後において、LAPの発現比率の高いサルでは、その発現比率が低いサルと比較してワクチン抗原特異的IgGが有意に低い、という結果を得た。そこで、サルにおけるサンプリング(末梢血、鼻腔拭い液、口腔拭い液、結膜拭い液、気管拭い液)を継続して行った。末梢血単球上のLAP発現率の高低によってワクチン接種後の長期免疫反応が異なる可能性があり、解析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究を通して、単球表面上のLAPの発現が非常に不安定であり、LAPの高い個体から単球を分離し試験管内の実験を行うことにより仮説を証明することが予想通りに進まないことが分かった。そこでLAPを単球系セルラインTHP-1に遺伝子導入した結果、細胞内染色によりLAP産生が確認されたが、細胞表面への発現が見られず、細胞表面への発現にはGARPとLTBP1を共に導入することが必要であることが分かった。また、LAPの細胞表面への発現と細胞内における産生が相関しない可能性が考えられたことから、細胞表面へのLAPの発現が生体環境由来のTGF-βによるのか、細胞内から産生されたLAPの発現なのか、区別する必要があると考えられた。一方で、LAPの発現率の高い個体と低い個体の生体内の反応を比較するため、ワクチン接種後のサルのサンプリングを継続して行っており、長期免疫反応の解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
試験管内の実験として、THP-1にi) LAP, GARP, LTBP1を遺伝子導入し、LAPの細胞表面への発現比率の高い細胞、ii) LAPとGARPのみを遺伝子導入し、細胞表面への発現比率の低い細胞、iii) LAPとLTBP1のみを遺伝子導入し、細胞表面への発現がなく全て分泌される細胞、を作製する。i)-iii)のM1およびM2への分化能を比較する。また、i)-iii)のインフルエンザウイルス感染への反応を比較する。 LAPの細胞表面への発現と細胞内における産生の相関性を評価するため、末梢血のシングルセル解析を行い、LAP, GARP, LTBP1の末梢血各細胞集団における遺伝子発現と、FACSによるLAP, GARPの細胞表面の発現を比較する。 生体内の実験として、インフルエンザウイルス(H5N1)全粒子不活化ワクチン皮下投与を行った末梢血単球上LAP発現率の高いサル、LAP発現率の低いサルにおける長期免疫反応の解析を行う。
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Causes of Carryover |
試験管内の実験に変更が生じたため、当該年度はインフルエンザウイルスワクチンを接種したサルの長期免疫反応を追うことに専念した。そのため次年度使用額が生じた次第である。 翌年度は、末梢血単球のシングルセル解析、新たに遺伝子導入を行った単球を用いた分化誘導試験およびインフルエンザウイルス感染実験を行う予定である。
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