2016 Fiscal Year Research-status Report
LUBAC欠損型自己炎症性疾患における抗炎症性T細胞の同定と機能解析
Project/Area Number |
16K19106
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 克博 京都大学, 医学研究科, 特定研究員 (70739862)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | LUBAC / SHARPIN / 自己免疫疾患 / 自己炎症性疾患 / 制御性T細胞 / 炎症 / 免疫 / Treg |
Outline of Annual Research Achievements |
ユビキチンリガーゼ複合体LUBACの機能(NF-kBシグナルの活性化に寄与する)が全身で低下したマウス (cpdm) は、細胞死及び自然免疫反応の亢進を伴う自己炎症性の皮膚炎を発症する。本研究はcpdmにおける病態の進行を抑制する抗炎症性T細胞の存在、及びそのメカニズムを明確にすることを目的とする。 抗炎症性T細胞の正体がFoxP3を発現する制御性T細胞(Treg)であるか否かマウス遺伝学を用いて詳細に解析した。これまでにcpdm(原因遺伝子Sharpin)のT細胞系列でSHARPINを発現させた場合、皮膚炎が劇的に改善したことから、今回FoxP3-Creマウスを導入し、同様にTreg特異的にSHARPINを発現するcpdmを作成した。新たに作成したマウスにおいても皮膚炎の発症が遅延しており、他臓器の炎症所見も明らかに改善された。次に、Treg内でのSHARPINの存在の重要性を明らかにするべく、Treg特異的にSHARPINを欠損したマウスを作成した。マイクロアレイの結果、SHARPINを欠損したTregでは、皮膚へのホーミングに必要なケモカインレセプターや、TCR依存的に遺伝子群の発現の低下が観察され、興味深いことに、cpdmと同様、皮膚において広範囲の炎症所見が観察された。皮膚の組織解析から、リンパ球よりもミエロイド系の血液細胞が炎症部位に集積しており、病理学的にもcpdmマウスと酷似していた。同時に作成したTreg特異的HOIP(LUBACの触媒サブユニット)欠損マウス(LUBACの活性がnullのマウスでFoxP3欠損マウス様の致死性多臓器自己免疫病を呈する)では、むしろ炎症部位に大量のリンパ球が浸潤していた。Tregの障害の程度が、病理像の違いを生み出すという実験的事実から、cpdmの皮膚炎の発症に獲得免疫が直接的に関与していることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度目標にしていた抗炎症性T細胞の同定については、マウス遺伝学を用いて詳細に解明することができた。Treg特異的欠損マウスを作成し、SHARPIN欠損時、及びLUBAC複合体欠損時の生体における影響を明確に示した結果、Treg障害に基づく自己免疫疾患において、自己炎症性の病理像を誘導することが出来るという新たな仮説を提起することに繋がった点は、今後、抗炎症性Treg細胞の抑制メカニズムを明らかにしていく上で大きな成果であると言える。また、SHARPIN欠損Tregの遺伝子発現プロファイルから得られた情報など、今後の方針に直接的に影響する解析結果を数多く得ることができた。 しかしながら、皮膚局在型のTregの詳細な解析、及び炎症抑制メカニズムについては解析に至って居らず、当初の計画以上に進展しているとまでは言えない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、皮膚局在型Tregによる自己炎症抑制メカニズムの解析に焦点を当てて解析をしていく予定である。Treg特異的にSHARPINを欠損したマウスでは、T細胞が病原性であるにもかかわらず、ミエロイド系細胞の活性、組織浸潤が顕著に観察できた。この結果は、これまで末梢性免疫寛容において知られてきた、Tregによる自己反応性T細胞の活性化抑制機構の他に、何らかの自然免疫系の活性化を制御する役割があることを示唆している。 SHARPINを欠損した細胞はTNF依存的な細胞死に感受性が高く、cpdmにおいては、表皮細胞の積極的な細胞死が、皮膚炎の病態の本質であると考えられている。皮膚は細菌叢や外界からのストレスに常に曝されており、特殊な制御環境を持ち、皮膚の恒常性維持にTregがどのように関与してくるかに着目して、機能解析を行っていく予定である。 研究計画にも記載したように、皮膚局在性Tregを主要な解析対象としているが、予想よりも皮膚から得られるTregが少なく、採取する際の条件に検討が必要と考えている。改善しないようであれば、FACS解析や網羅的遺伝子発現解析等に解析手法を限定して進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
Tregを皮膚から直接採取し解析する予定であったが、当初設定した研究手法では解析に必要なだけの細胞数を得ることが困難であった。そのため、関わる種々の解析に着手することが出来ず、必要とされた助成金を次年度へ移行する必要があった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度解析が出来なかった部分は、条件の再検討を行い、当初の計画通りの内容で次年度も進める。次年度の研究計画では、初年度不完全であった研究の延長上に位置するものもあれば、個別に開始できる実験を含んでいる。進行状況は個別の研究において変わってくるが、全体としての研究計画に大きな変更はない。
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Research Products
(2 results)