2017 Fiscal Year Research-status Report
糞線虫寄生世代メスの単為生殖における精子非依存性極性形成機構の解明
Project/Area Number |
16K19115
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
日野 明紀菜 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (30712103)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 単為生殖 / CRISPR/Cas9 / 極性形成 / 糞線虫 / 発生・分化 / 寄生虫 / ゲノム / in vitro 培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は糞線虫の単為生殖卵における極性形成機構を解明することを目的とし、その上で有用と考えられるCRISPR/Cas9系を用いた遺伝子組換え法の確立を試みた。それぞれCas9タンパク質とguideRNAおよび相同組換え断片を発現するプラスミドを、マイクロインジェクション法によって導入することによって遺伝子組換えを誘導することを計画した。マイクロインジェクションを行う対象は、C. elegansと形態が類似している自由生活型世代メスを用いた。糞線虫自由生活世代は糞線虫感染ラットの糞便を寒天培地上で培養することによって得られるが、設備の制限上感染ラットの維持が困難であることから、in vitro培養によって自由生活型世代虫体を得ることを試みた。 通常、自由生活世代における有性生殖後に発生する卵はC. elegansの休眠体と類似した感染型虫体に発育することが知られている。そこで、C. elegansの休眠体誘導阻害物質であるdelta7ダファクロン酸(d-DA)を有性生殖後に発生する卵に加えて培養することで、感染型虫体への成長が阻害され次世代の成虫体が得られると考えた。この方法はすでにヒト糞線虫で確立されていたが、本研究で用いたネズミ糞線虫では試みられたことがなかった。 有性生殖後に発生する卵をd-DA(500 nM) を添加した糞便融解液中で培養したところ、培養2日後体長1mm体幅50 μmの虫体が見られた。この虫体は腸管及び生殖腺が発達しており、産卵口の形成も見られた。これらは自由生活世代雌の特徴と一致していた。一方で、d-DAを加えない培養では全ての虫体が感染型幼虫に発育した。 以上の結果から、d-DAの添加により、ラットによる継代を必要としない糞線虫のin vitro培養の可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
in vitro培養によって自由生活型世代虫体を得ることを試みたが、現在の時点では成功に至っておらず、十分な材料の確保が困難であったため。
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Strategy for Future Research Activity |
d-DAの添加のタイミングや濃度、その後の培養条件の検討を行い、ラットによる継代を必要としない糞線虫のin vitro培養を確立する。
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Causes of Carryover |
少額であるため、次年度以降の物品購入費に補填する。
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