2016 Fiscal Year Research-status Report
トキソプラズマ新規GRAsの同定とその宿主「乗っ取り」機構の解析
Project/Area Number |
16K19116
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
馬 知秀 大阪大学, 微生物病研究所, 特任助教(常勤) (90755266)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | GRA15 / オルガネラ / トキソプラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
トキソプラズマから宿主細胞内に分泌され、宿主細胞内シグナル伝達を介してマウスにおける病原性発揮に関与する新規GRAsを探索するため、宿主の特定のオルガネラに蓄積する。まず、未感染細胞及び野生型またはASP5欠損トキソプラズマを感染後1時間後、2時間後、6時間後の細胞を破砕し、核画分を分取、さらに上精を超遠心分離することにより小胞体画分、ゴルジ体画分、ミトコンドリア画分に分離する。それぞれの画分のタンパク質を精製しiTRAQ法で時間ごとに異なる標識(113-117:4-plex標識)し、感染細胞内の特定オルガネラごとにタンパク質量が増加するトキソプラズマ由来分子群を質量分析することにより定量的かつ網羅的に同定した。その中でASP5欠損原虫感染群で増加しないものはGRAs候補分子である。実際にGRAsであることを確認するために、C末端部位にFlagタグを付けるべく内在性遺伝子座にノックインし、原虫内でデンスグラニュールに局在することと感染細胞内において寄生胞内微小ナノチューブまたは宿主の各オルガネラに局在することを免疫染色法および免疫電子顕微鏡法で検討した。その結果、GRA15がASP5依存的に宿主細胞質に存在することが判明した。 野生型及びASP5欠損原虫を線維芽細胞に感染させ、原虫感染によって起きる遺伝子発現を網羅的にRNA-seqによってデータを取得し、遺伝子オントロジー解析またはシグナルパスウェイ解析により、遺伝子群を分類し、その発現プロファイルを解析した。GRA15がASP5に依存してプロセスされるかを検討するために、野生型及びASP5欠損原虫にC末端Flagタグを有するGRAsを発現させ、ウェスタンブロット法でプロセシングされるかを検討した結果、GRA15は原虫内でプロセシングされていることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ASP5依存的なデンスグラニュールタンパク質としてGRA15を同定できたから
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Strategy for Future Research Activity |
GRA15の遺伝子欠損トキソプラズマをII型原虫で作製し、Vero細胞では増殖やプラーク形成能に差がない(すなわち、培養細胞レベルではこの候補分子が生存に必須ではない)ことを確認した後に、マウスに感染させ生存率を測定する。感染方法については、腹腔感染による全身性感染モデルとfootpadに感染させる局所感染モデルの2種類を行う。また遺伝子欠損原虫の作製に使用する親株は蛍光蛋白質・ルシフェラーゼ及びモデル抗原である卵白アルブミン蛋白質(OVA)を発現していることから、生体ルシフェラーゼ光検出システム(IVIS)による時空間的な原虫の拡散及び抗OVA特異的CD4/CD8 T細胞の移入実験による抗原提示細胞の機能解析、さらに抗原虫・抗OVA特異的抗体価の上昇の有無、血清中の炎症性サイトカインの濃度をELISA法にて検討し、病原性が低下した原虫および免疫抑制機能が低下した原虫であるかを検討する。 ここで病原性が低下する理由は、ア)宿主免疫系抑制機構の不全 または イ)感染拡大異常(すなわち、トロイの木馬現象の異常) の2つの原因に大別される。ア)であれば多くの場合、遺伝子欠損原虫感染により抗体価や血中炎症性サイトカインが野生型原虫感染と比べて高値となることから判断でき、そうでない場合はイ)と考え、今後の研究を進めることとする。
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Causes of Carryover |
使用を計画していたが、他の資金により物品費や旅費を補填することが出来たため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度内では大量の実験動物を使用し、さらに研究成果を国内外に発表しに行く予定もあることから、全ての研究経費を使用する予定としている。
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