2016 Fiscal Year Research-status Report
コモンマーモセットで解き明かすブドウ球菌エンテロトキシン嘔吐メカニズム
Project/Area Number |
16K19119
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
小野 久弥 北里大学, 獣医学部, 助教 (80704569)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | コモンマーモセット / 肥満細胞 / ブドウ球菌エンテロトキシン / 嘔吐型食中毒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、小型霊長類であるコモンマーモセットを用いてブドウ球菌エンテロトキシンの嘔吐メカニズムの全容解明を目指している。研究目標のうち、まず以下の2点を明らかにするために研究を実施した。 1. SEs の嘔吐発現における腸管肥満細胞上の受容体を同定し、SEs と受容体との結合から脱顆粒に至るシグナル伝達機構を明らかにする。 2. 免疫組織染色およびタンパク質相互作用の解析により、作製した SEA 変異体と肥満細胞における相互作用を精査し、SEA の嘔吐活性に必須な構造を明らかにする。 平成28年度は、まず腸管組織から抽出したタンパク質を用いて免疫沈降法およびアフィニティクロマトグラフィを行い、SEAに強く結合する分子の探索を行った。SEA結合カラムで精製した組織抽出液をfar western blottingにより解析し、SEAと高親和性分子が存在するか確認した。現在複数のサイズの候補タンパク質が検出されており、LC-MSによる解析に向けて準備中である。 また、SEA変異体の作出により、毒素分子内における活性部位を探索中である。作製したSEAの部位特異的変異体をマーモセット腸管の組織切片上にマウントし、免疫染色後に検出することで結合性の変化を検討している。これまでにSEA分子内において2箇所の肥満細胞への結合に関わる部位を見出しており、数アミノ酸残基レベルまで絞り込みを行っている。また予定を繰り上げて嘔吐シグナル伝達経路についても解析を行った。マーモセットにケミカルメディエーターの阻害剤を投与しセロトニンアンタゴニストの作用を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に実施予定であった研究項目について、 1. SEs の嘔吐発現における腸管肥満細胞上の受容体を同定し、SEs と受容体との結合から脱顆粒に至るシグナル伝達機構を明らかにする。 2. 免疫組織染色およびタンパク質相互作用の解析により、作製した SEA 変異体と肥満細胞における相互作用を精査し、SEA の嘔吐活性に必須な構造を明らかにする。 上記の2つに着手することができ、受容体の同定や活性部位の特定の最終段階には至っていないが、一定の結果が得られた。またin vivoにおける嘔吐シグナル伝達機構の解析実験を前倒しして実施することができたため、概ね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
嘔吐シグナル伝達機構の解析実験が順調に進展しているため、この実験系を前倒しして実施ながら受容体の同定および活性部位の特定を進める。現在SEA受容体として複数のサイズの候補タンパク質があるが、肥満細胞上に存在するタンパク質を収集するために以下の実験を準備している。マーモセット腸管からコラゲナーゼ等を用いて細胞を分離し、セルソーターを用いて肥満細胞だけを分取し、この細胞を用いてタンパク質の解析やmRNAの解析を行う。すでにマーモセットの肥満細胞を染色する抗体は確保済みである。
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Causes of Carryover |
計画的に使用しており、予定通り予算を消化していたが端数が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度と同様に計画的に使用する。
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