2017 Fiscal Year Annual Research Report
Functional elucidation of sRNA on the pathogenicity island of Helicobacter pylori.
Project/Area Number |
16K19122
|
Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
氣駕 恒太朗 自治医科大学, 医学部, 講師 (90738246)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ピロリ菌 / sRNA / 酸化ストレス / チオレドキシン / 胃がん / 病原性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ピロリ菌の慢性感染は、胃炎、胃潰瘍、胃癌そしてMALTリンパ腫の誘導因子であることが多くの疫学・実験的成果から示されている。胃がんを含めたこれらの疾患の克服には、ピロリ菌の感染機構を詳細に把握する必要がある。2010年に、ピロリ菌の第一次転写産物の網羅的な発現解析を行った研究が発表された(Sharma CM. et al., Nature 2010)。その結果、本菌にはmRNA、rRNA、tRNAに加えて、多種多様なBacterial small RNA(sRNA)も存在していることが明らかとなった。そこで、ピロリ菌が持つsRNAも本菌の病原性の発揮に重要な役割を果たしていることが推測された。本研究を進めていくと、酸化ストレス応答に重要なsRNA(sRNA-X)の同定に至った。ピロリ菌が酸化ストレスに晒されると、多くのsRNAは速やかに分解されていく一方で、sRNA-Xは安定して発現しており、さらには発現の増加も観察された。このsRNAの欠損株を作製すると、酸化ストレスへの感受性が増加した。sRNA-X欠損株の遺伝子発現パターンを網羅的に解析すると、チオレドキシン関連遺伝子の発現が顕著に減少していることが確認された。さらに、sRNA-Xはチオレドキシン関連遺伝子のmRNAの5’末端に配列特異的に結合し、その安定性を高めていることがわかった。チオレドキシンは酸化ストレスに適応するために重要な遺伝子であることが知られているため、sRNA-Xはチオレドキシンを安定化することで、酸化ストレスへの抵抗性を得ていることが示唆された。また、in vivoの感染実験から、sRNA-Xやチオレドキシン関連遺伝子を欠損したピロリ菌は胃への定着数が少なかった。これらの結果から、sRNA-Xはチオレドキシンを制御することで酸化ストレスへの防御やピロリ菌の定着に寄与していることがわかった。
|
Research Products
(4 results)