2017 Fiscal Year Research-status Report
高度多剤耐性緑膿菌染色体に特異的に存在するゲノミックアイランドの機能解析
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16K19133
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
多田 達哉 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00624644)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 多剤耐性緑膿菌 / 染色体 / プラスミド |
Outline of Annual Research Achievements |
多剤耐性緑膿菌は、カルバペネム、アミノグリコシドおよびフルオロキノロンの3系統の薬剤に耐性を示す緑膿菌と定義される。2005年以降、上記薬剤の最小発育阻止濃度(MIC)が 128mg/L以上を示す高度多剤耐性緑膿菌株が分離されるようになってきた。申請者は、これまで日本、ベトナムおよびネパールの医療施設で分離される多剤耐性緑膿菌の全ゲノム解析を実施してきた。その結果、緑膿菌では薬剤耐性遺伝子がプラスミドを介して菌種間に水平伝播することによって播種されるだけではなく、完全長ゲノム情報を用いた比較ゲノム解析から特定の株では薬剤耐性遺伝子を積極的に染色体ゲノムに取り込むことによって流行株へと変貌していくことを明らかにしてきた。また、申請者は、高度多剤耐性緑膿菌株の主要な薬剤耐性遺伝子(カルバペネマーゼ、アミノグリコシド修飾酵素および16S rRNAメチラ ーゼなど)はすべて染色体ゲノム上に存在していることを明らかにしてきた。 本研究では流行株および非流行株の多剤耐性緑膿菌株の完全長ゲノムおよびドラフトゲノムを用いた比較ゲノム解析から日本で流行している多剤耐性緑膿菌流行株はシークエンスタイプ(ST)235に属しており、このST235株には特有のtypeIV secretion systemを持っていることが明らかとなった。さらにこのST235に属する多剤耐性緑膿菌のほとんどはCRISPR/CAS systemが欠如していることも明らかとなった。 以上の結果から、流行性のST235多剤耐性緑膿菌の特異的な遺伝特性により変異効率が高まり、この高い変異効率が外的環境の変化に対応していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の所属機関が変更され、着任先への研究機器および研究試料の移設が難航し、実験のセットアップが予定より遅れたため、研究の遅延を余儀なくされた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はST235多剤耐性緑膿菌が持つ高い変異効率が外部からの薬剤耐性因子の取り込みにどのように関連しているのか、その分子基盤の解明を行うとともに、その分子基盤が他のグラム陰性菌ではどのように作用しているのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究代表者の所属機関が変更され、着任先への研究機器および研究試料の移設が難航し、実験のセットアップが予定より遅れたため、研究の遅延を余儀なくされた。
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