2016 Fiscal Year Research-status Report
polyI:CによるNALTでのワクチン特異的IgA誘導機構の解明
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16K19134
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
有木 宏美 北海道大学, 医学研究科, 助教 (40515061)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | polyI:C / 粘膜免疫 / TLR3 / TICAM1 / インフルエンザワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
ワクチン開発においてアジュバンは非常に重要である。現在、インフルエンザに対する経鼻投与型ワクチンの開発がなされており、二本鎖RNAの合成アナログであるpolyI:Cとの同時投与によって非常に高い予防効果を発揮することが明らかとなっている。しかし、polyI:Cの抗体産生増強の作用機序については全く研究がなされていない。本研究では経鼻投与されたpolyI:Cが鼻粘膜に存在する鼻腔関連リンパ組織(nasal-associated lymphoid tissue: NALT)を介して、ワクチン特異的抗体産生をどのような分子機構で増強するのかを明らかにすることを目的としている。ノックアウトマウスを用いた研究から、polyI:Cによる抗体産生増強はTLR3-TICAM1経路に依存していた。そこでNALTでのTLR3発現細胞を同定し、経鼻投与されたpolyI:CがTLR3発現細胞と共局在することを見出した。次にpolyI:C投与時のNALTにおける免疫細胞の活性化状態をフローサイトメトリーで観察したところ、樹状細胞、B細胞の活性化が確認された。T細胞はほとんど活性化していなかった。polyI:Cとワクチンで免疫したマウスの脾臓細胞を単離し、ワクチンで再刺激を行ったところ、ワクチン単独で免疫したマウス由来の脾臓細胞より、polyI:Cとワクチンを投与したマウス由来の脾臓細胞でIFNgの産生が増大した。さらに、CD4+T細胞、CD8+T細胞ともにIFNg陽性細胞の割合が増加していた。抗原特異的T細胞応答もTLR3ノックアウトマウスではキャンセルされたことから、抗原特異的T細胞応答もTLR3依存的であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初設定した研究計画通りに進んでおり、TLR3陽性細胞の同定、polyI:Cの取り込み細胞の同定、免疫細胞の活性化状態の観察ができていることから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は1. TLR3発現細胞を欠くマウスでの抗原特異的T細胞応答の解析を行う。予備実験ではTLR3発現細胞群を欠くKOマウスでは、polyI:Cによる抗体産生増強が観察されなかった。そこでこのマウスにおけるT細胞応答への影響を解析する。具体的には、ワクチン投与後の脾臓細胞を単離し、ワクチンによる再刺激によって産生されるIFNgをELISAにて測定する。その際、CD4, CD8T細胞でのIFNg産生も細胞内染色法によりフローサイトメーターで解析する。 2.TLR3発現細胞での遺伝子変化についての検討を行う。NALTではTLR3発現細胞が非常に数が少ないことが予備実験より明らかとなっている。そこで、NALTを含む全身のリンパ節、脾臓よりTLR3発現細胞をMACSビーズを用いて単離し、ワクチン単独投与群、ワクチン+polyI:C投与群でクラススイッチ促進分子の発現を定量的PCR法にて検討する。また、in vitroで刺激を行った際のクラススイッチ促進分子の発現量についても検討する。 3.TLR3発現細胞の表面マーカーの探索を行う。予備実験で同定したTLR3発現細胞群の表面マーカーを、フローサイトメーターを用いてより詳細に同定する。これまで報告のある細胞群と表面マーカーを比較することで機能の予測をつけることができる。
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