2017 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular Mechanisms a Novel Genotype of Respiratory Syncytial Virus Replaced Old One
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16K19135
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
古瀬 祐気 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 特定助教 (50740940)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | RSウイルス / 呼吸器感染 / 進化 / 遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
RSウイルスは、主に細気管支炎を引き起こす。このウイルス感染症は冬季に流行し、年間で3000万人以上の小児が感染し6万人ほどが死亡している。RSウイルスは2つのグループにわけられ、さらに複数の遺伝子型へと細分化される。ON1型と呼ばれる新たな遺伝子型の出現が2012年にカナダから報告された。その後、このON1遺伝子型をもつウイルスは世界中へと拡がり、それまでに流行していた遺伝子型と置き換わり主要な割合を占めるようになった。 本研究では、ON1型RSウイルスが、1)どのように発生したのか、2)どのように感染が拡大したのか、3)従来の遺伝子型をもつRSウイルスとどのように異なるのかを、遺伝学的・分子系統学的・分子生物学的に明らかにすることを目的とした。 7件のON1型RSウイルスと6件の従来の古い遺伝子型をもつRSウイルスの全ゲノムの塩基配列を決定し、ON1型をもつRSウイルスは複数の特徴的なアミノ酸変異をもつことがわかった。さらに、世界中から報告されているRSウイルスのゲノムとの比較によって、G遺伝子の重複が過去に2回起きたという進化過程が明らかとなった。2階層のSIRモデルによってシミュレーションをおこなったところ、免疫学的な違いが大きいことと、季節による伝播能の変動がない状況において、新しい遺伝子型をもつウイルスの流行が拡大することがわかった。また、ヒトの気道上皮に由来する培養細胞にON1型RSウイルスを感染させたところ、古い遺伝子型をもつウイルスに比べて増殖が若干遅く、細胞融合が小さいことが観察された。さらに、臨床検体においてもON1型RSウイルスに感染した患者ではウイルス量が古い遺伝子型をもつウイルスに比べて少なかった。これらのことから、遺伝子型間での増殖の違いは、細胞内での複製効率よりも細胞間での伝播能の違いによるものである可能性が考えられた。
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