2016 Fiscal Year Research-status Report
自然免疫系を標的とした急性期・晩期放射線性消化管症候群の治療戦略の開発
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16K19148
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
武村 直紀 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (50648699)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 放射線性消化管症候群 / 放射線誘導性小腸線維症 / 好酸球 / 放射線誘導性口腔内粘膜炎 / TLR3 |
Outline of Annual Research Achievements |
電離放射線に被曝した臓器は、その感受性に応じて様々な機能障害を起こす。人体において、消化管は放射線に対する感受性がとりわけ高く、放射線事故や癌の放射線治療において高線量の放射線に曝されると、急性期から晩期に渡って多様な障害が引き起こされる。これまでに研究代表者は、マウスにおいて好酸球の遺伝子欠損が放射線誘導性小腸線維症の症状を、またTLR3の遺伝子欠損が放射線誘導性口腔内粘膜炎の症状を顕著に抑えることを見出しており、本研究課題ではその仕組みについて解析した。 放射線誘導性小腸線維症に好酸球が寄与する仕組みについて、H28年度では①好酸球の線維化部への流入を誘導する機構、②好酸球の活性化を誘導する機構、③好酸球による線維化促進機構を解析した。放射線を受けたマウスの小腸では、繊維化部において活性化した筋線維芽細胞がCCL11を発現し、CCR3依存的に好酸球を誘致することが分かった。さらに、活性化した筋線維芽細胞はGM-CSFを産生して好酸球を活性化し、それにより活性化した好酸球はTGF-βを発現して筋線維芽細胞のコラーゲン産生を促すことが分かった。 放射線誘導性口腔内粘膜炎について、TLR3がいかにして上皮傷害を起こすかを調べた。放射線を受けたマウスの舌での炎症細胞の浸潤を評価したところ、上皮構造が破たんして潰瘍化した部分でのみ浸潤が認められたことから、TLR3が炎症細胞を誘致して上皮傷害の起こすわけではないと考えられた。合成リガンドであるpoly(I:C)をマウスに投与したところ、糸状乳頭の基底細胞に細胞死が誘導されたため、おそらくは放射線照射後に発生したTLR3リガンドにより細胞死が亢進することが、上皮構造の破たんに拍車をかけていると考えられた。さらに、TLR3の阻害剤が口腔内粘膜炎を顕著に抑えることも確認した。 これらに関して国内外の学会ならびに学術誌において研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、平成28年度の研究計画として、線維症の解析では①好酸球の線維化部への流入を誘導する機構、②好酸球の活性化を誘導する機構、③好酸球による線維化促進機構を明らかにすることを目標とした。研究代表者は上記の計画を平成28年度のうちにすべて達成し、詳しくは①繊維化部において活性化した筋線維芽細胞がCCL11を発現し、CCR3依存的に好酸球を誘致すること、②活性化した筋線維芽細胞がGM-CSFを産生して好酸球を活性化すること、③活性化した好酸球はTGF-βを発現して筋線維芽細胞のコラーゲン産生を促すことを明らかにした。一方で、口腔内粘膜炎の解析では、平成28年度の研究計画として、TLR3が上皮細胞に誘導する傷害の形態を明らかにすることを目標とした。結果として、TLR3は上皮の細胞死を誘導していることを明らかにした。さらに、平成29年度の目標であるTLR3阻害剤の効果の検討を先に行い、期待通りに阻害剤が顕著に口腔内粘膜炎を抑えることを明らかにした。これらの成果を国内外の学会で研究報告するとともに、国内の学術誌に総説を寄稿した。以上のように、おおむね申請時の計画の通りに研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初に設定した目標通り、平成29年度も解析を進めていく。線維症の解析では好酸球を標的とした薬剤の治療効果について解析を行う。口腔内粘膜炎の解析では、順序の前後が生じたが、TLR3が誘導する下流の情報伝達機構について解析する。また、放射線だけでなく、抗がん剤誘導性の口腔内粘膜炎でもTLR3が有効な予防・治療標的とならないかを解析する。これらについて成果が得られれば、引き続き国内外の学会、学術誌を通して研究報告を行う。
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Causes of Carryover |
実験計画が順調に進み、研究が難航した場合の代替案としていた実験をする必要がなくなった。平成28年度の研究で、放射線誘導性の小腸線維症に関与する好酸球の機能が明確化された。平成29年度では好酸球を除去、あるいは機能を阻害することを目的に、市販の薬剤を試験するほか、新規の薬剤開発も目指すこととし、それらの放射線誘導性小腸線維症に対する予防・治療効果を評価する。また、TLR3阻害剤が放射線誘導性の口腔内粘膜炎の新たな予防・治療手段となりうることが分かり、平成29年度では同阻害剤が抗癌剤誘導性の口腔内粘膜炎にも有効であるかを評価することで、本研究のさらなる発展を目指す。そのため、今年度では未使用となった予算を来年度に持ち越すことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記試験のために、主に試薬、培養のための培養液、マウス購入、飼育代として使用する。
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[Journal Article] Bone-protective Functions of Netrin 1 Protein.2016
Author(s)
Maruyama K, Kawasaki T, Hamaguchi M, Hashimoto M, Furu M, Ito H, Fujii T, Takemura N, Karuppuchamy T, Kondo T, Kawasaki T, Fukasaka M, Misawa T, Saitoh T, Suzuki Y, Martino MM, Kumagai Y, Akira S.
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Journal Title
J Biol Chem
Volume: 291
Pages: 23854-23868
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Inhaled Fine Particles Induce Alveolar Macrophage Death and Interleukin-1α Release to Promote Inducible Bronchus-Associated Lymphoid Tissue Formation.2016
Author(s)
Kuroda E, Ozasa K, Temizoz B, Ohata K, Koo CX, Kanuma T, Kusakabe T, Kobari S, Horie M, Morimoto Y, Nakajima S, Kabashima K, Ziegler SF, Iwakura Y, Ise W, Kurosaki T, Nagatake T, Kunisawa J, Takemura N, Uematsu S, Hayashi M, Aoshi T, Kobiyama K, Coban C, Ishii KJ.
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Journal Title
Immunity.
Volume: 45
Pages: 1299-1310
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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