2017 Fiscal Year Research-status Report
クローン病腸管線維化治療を目的としたHSP47の線維化機構の解明
Project/Area Number |
16K19150
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
本澤 有介 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (90737884)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 腸管線維化 / Heat shock protein 47 / クローン病 / 炎症性腸疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、クローン病(CD)の腸管線維化についてコラーゲン産生に必須の分子であるheat shock protein(HSP)47が炎症性サイトカインであるIL-17Aを介して亢進していることを報告してきた。しかしながら、HSP47を介した腸管線維化の詳細な機序解明については十分ではなく、線維化治療におけるHSP47制御の検討も今後の課題である。本年度はHSP47に関与するサイトカインおよび経路について検討し、さらにヒトHSP47shRNAによる線維化の制御を試みた。結果、ヒト筋線維芽細胞株(CCD-18Co)ではIL-17A以外にIl-1β刺激によりHSP47およびコラーゲンの発現上昇を認め、さらにIL-17AとIL-1βの共刺激ではより発現が増強された。この為、Il-1βとCDとの関連について追加検討したところ、CD腸管狭窄症例においてMediterranean fever(MEFV)遺伝子の変異を有している症例が有意に多かった。同変異はインフラマゾームと呼ばれる蛋白複合体を介してIL-1βの発現が誘導されるとされ、実際に同変異を有するCD患者のperipheral-blood mononuclear cell(PBMC)の検討ではインフラマゾームの活性化およびIL-1βの誘導が確認された。また、同変異を有するCD患者と変異のないCD患者の血清中IL-1β濃度を計測したところ、変異を有する症例では有意にIl-1βの発現上昇を認めた。ヒトHSP47shRNAによる検討ではヒト腸管組織より単離した筋線維芽細胞の初代培養系(human intestinal subepithelial myofibroblasts: ISEMFs)におけるコラーゲンの発現抑制が確認された。この事から、IL-1βを介した経路およびHSP47そのものの制御による腸管線維化治療の可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IBDモデルマウスであるIL-10KOマウスにおける検討では腸炎発症の時期が安定しないことがあり、腸炎の程度に差が生じた。結果として、マウスの検討において各種蛋白の発現に差異が生じ、解析に困難が生じることがあった。この為、本年度はヒト血清、細胞株(CCD-18Co)およびヒト腸管組織より単離した腸管筋線維芽細胞の初代培養系(human intestinal subepithelial myofibroblasts: ISEMFs)における検討を行った。培養細胞における検討では昨年度マウス細胞株の同様にCCD-18CoおよびISEMFsにおいてIl-17AおよびTGF-β1刺激でのHSP47、コラーゲン発現亢進に加えてIl-1βにおける発現亢進を確認した。また、ヒトHSP47shRNAによるHSP47のノックダウンによりコラーゲンの発現抑制も認めたことから、ヒトにおけるHSP47の線維化の関与およびその制御の可能性についてある程度明らかにすることが可能であった。この為、ヒト解析が行えたことやHSP47/Il-1βの経路の確認やその背景の患者群においてMEFV遺伝子変異を有する新たな可能性の発見など将来的な腸管線維化制御の目標としては概ね順調な研究が可能であったと判断された。しかしながら、IBDモデルマウスにおいて予定していた腸炎部位に直接HSP47shRNAを投与する検討が困難であったことから、今後はIL-10KOマウスの腸炎発現状態の再検討や他のIBDモデルマウスであるTCR-αKOマウスでの解析も検討中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
ヒト血清、細胞株(CCD-18Co)およびヒト腸管組織より単離した腸管筋線維芽細胞の初代培養系(human intestinal subepithelial myofibroblasts: ISEMFs)におけるHSP47の関与について検討し、ヒトでもHSP47が腸管線維化に関与している可能性を確認した。今後の予定としてIL-1βがCDにおいて発現が亢進し、特に腸管狭窄型CDではMEFV遺伝子変異を背景として同サイトカインが関与し、さらにHSP47・コラーゲンの発現が腸管線維化に関与しているメカニズムの解析を行うことを予定している。具体的にはMEFV遺伝子はインフラマゾームを介してIl-1β発現に関与していることから変異を有するCDと同遺伝子変異を有さないCDにおけるインフラマゾーム発現の差異について検討する。現在、数例の症例においては発現の差異が確認されており、症例を蓄積する予定である。また、IL-1βはIL-17Aとの共刺激により、それぞれの単独刺激より有意にHSP47/コラーゲンの発現亢進を認めた。このことは炎症下での腸管線維化に複数にサイトカイン刺激が関与している可能性が示唆される結果であり、今後複数のサイトカインとの共刺激を含めた詳細な検討を予定している。また、ヒトHSP47shRNAによるHSP47ノックダウンによりコラーゲンの発現抑制も認めたことから、今後はCD腸管狭窄を認める患者群でのISEMFsの作成およびその発現抑制も試みる。課題としては炎症部位のISEMFsは増殖状態などの培養条件の差が大きく、複数の検体での検討が必要なことやHSP47shRNAそのものの抑制効果の検討が困難な可能性があることである。その場合にはHSP47への関与が確認されている複数のサイトカインの阻害実験を行うことを予定し、HSP47制御を介した腸管線維化治療の可能性を検討する。
|
Causes of Carryover |
(理由)本年度はヒト血清、細胞株およびヒト腸管組織より単離した腸管筋線維芽細胞の初代培養系(human intestinal subepithelial myofibroblasts: ISEMFs)などヒトを主な対象とした研究内容となった。理由として新たに購入した実験マウス(IL-10KO)は自然腸炎発症の時期が安定せず、腸炎の程度に差が生じ、マウスの検討において各種蛋白の発現に差異が確認された。この為、マウスを用いた実験の開始がマウス購入後に時間がかかり、IL-10KOの実験予定をヒト細胞株などヒト中心の検討を行った。検体は細胞株以外はヒト血清、腸管手術検体などのため実験マウス解析に要する経費が本年度は一部軽減され、次年度使用額が生じた。 (使用計画)次年度の研究遂行に必要とされる経費は1)ヒト細胞株、ISEMFsでの解析のための各種抗体および試薬、2)実験マウスの飼育・管理、3)情報収集および成果発表のための旅費である。1) 各種抗体および試薬:サイトカインの刺激実験、インフラマゾームの解析や遺伝子解析に必要な試薬・抗体の購入が必要である。2) 実験マウスの飼育・管理:腸炎状態の解析が必要となり、またマウス腸管線維化の治療実験など多めの実験マウスの維持管理が必要となる。3) 情報収集および成果発表のための旅費:本研究に関する情報収集および成果発表のための旅費が必要になる。
|
Research Products
(6 results)
-
[Journal Article] Tricho-hepato-enteric syndrome with novel SKIV2L gene mutations: A case report.2017
Author(s)
Eitaro Hiejima, Takahiro Yasumi, Hiroshi Nakase, Minoru Matsuura, Yusuke Honzawa, Hirokazu Higuchi, Ikuo Okafuji, Tohru Yorifuji, Takayuki Tanaka, Kazushi Izawa, Tomoki Kawai, Ryuta Nishikomori, Toshio Heike
-
Journal Title
medicine (baltimore)
Volume: 96
Pages: e8601
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-