2016 Fiscal Year Research-status Report
走化性因子受容体の新たな制御因子の機能とその免疫系における役割
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16K19154
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中井 晶子 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任研究員(常勤) (80768862)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 免疫学 / 走化性因子受容体 / GPCR |
Outline of Annual Research Achievements |
走化性因子受容体の新たなシグナル伝達制御機構を解明する過程で、我々は走化性因子受容体に会合する機能未知のタンパクXを同定した。本研究の目的は、タンパクXの走化性因子受容体のシグナル伝達、およびB細胞を介した免疫応答における役割を明らかにすることである。 これまでに我々は、タンパクXを欠損するB細胞においてCXCR4をはじめとする複数のケモカイン受容体の反応性が低下することを見出している。我々はCXCR4をモデルとしてタンパクXの作用機序を解析した。CXCR4のC末端領域はG protein-coupled receptor kinase(GRK)ファミリーに属するGRK2とGRK6によってそれぞれ異なる部位がリン酸化される。タンパクXはGRK6と会合し、GRK6によるCXCR4のリン酸化を促進することが明らかになった。一方で、GRK2によるリン酸化へのタンパクXの関与は認められなかった。また、GRK6の下流のシグナル伝達分子であるERK1/2およびp38の活性化がタンパクXを欠損することにより減少した。以上のことから、タンパクXがGRK6によるCXCR4のリン酸化を促進することで下流のシグナル伝達分子が活性化し、細胞遊走が亢進すると考えられる。 B細胞特異的にタンパクXを欠損するマウスをモデル抗原で免疫したところ、抗原特異的な血清抗体価が野生型マウスに比べて大きく減少した。このことから、タンパクXはB細胞の免疫応答に重要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究において、タンパクXがGRK6によるCXCR4のリン酸化を促進することで、下流のシグナル伝達分子が活性化することが明らかになった。また、タンパクXはB細胞の免疫応答に重要であることが確かめられた。以上のことから、走化性因子受容体のシグナル伝達機構についての解析、およびB細胞を介した免疫応答についての解析ともに、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
タンパクXが欠損するB細胞では、CXCR4の他にもCCR7やCXCR5の反応性が低下することが分かっている。そこでCXCR4以外の走化性因子受容体についてもGRK6に着目した解析を行い、走化性因子受容体のシグナル伝達制御におけるタンパクXの役割を一般化する。また、新規分子のB細胞を介した免疫応答における役割を解明するために、胚中心B細胞の数や形質細胞の数を調べるなど、B細胞特異的にタンパクXを欠損するマウスの解析をより詳細に行う。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、BRET(Bioluminescence Resonance Energy Transfer)を用いた実験を行い、タンパクXが走化性因子受容体のシグナル伝達にどのように関わっているか検討する予定であった。しかし、BRET測定用のプレートリーダーの納入が遅れたため、年内に購入するBRET測定用試薬が少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
タンパクXのCXCR4以外の走化性因子受容体におけるシグナル伝達制御機構の役割を明らかにするために、BRETを用いたアッセイを利用して、より幅広い解析を行う予定である。その際に必要な実験試薬の購入に繰越金を用いる。
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Research Products
(4 results)