2016 Fiscal Year Research-status Report
血管内皮特異的制御性T細胞とB細胞誘導による動脈硬化の制御法の開発
Project/Area Number |
16K19156
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
笠木 伸平 神戸大学, 医学部附属病院, 特定助教 (80457051)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | HSP65 / 動脈硬化 / 抗原特異性 / 免疫抑制療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
動脈硬化は代表的な国民の生活習慣病であり、他の生活習慣病(脳梗塞、心筋梗塞など)とも密接に関連があるが、その治療法の確立はいまだ確立されていない。現在、医療費の高騰や保険医療の財政的な破綻の問題は国家の財政において重要な課題となっており、生活習慣病を予防することで、国民の医療費を減らすこともまた、社会的には急務であると考えられている。 一方で、自己免疫疾患とは、自身の蛋白質(抗原)に対して免疫反応が活性化された結果、抗原を含む臓器の炎症や機能不全を起こす疾患であるといわれている。現在の治療法(免疫抑制療法)は自己免疫に加えて、感染免疫も抑制するために、易感染性という重篤な治療の副作用が臨床上問題となっている。申請者らはこれまで感染免疫に影響を与えずに自己免疫異常のみを選択的に抑制する治療法(抗原選択的免疫抑制療法)を複数のモデルマウスを使用し、確立してきた。本研究では、動脈硬化は動脈硬化の主な原因抗原が原因で起こる異常な免疫反応の結果起こるといったすでに確立している概念に基づいて、動脈硬化モデルマウスを用いて、動脈硬化の主な原因抗原を探索し、血管内皮抗原に伴う免疫異常のみを選択的に抑制する治療法の確立および基盤の創生を目的とした。最終的には動脈硬化の治療法の開発、臨床応用を目指す。そのためにはどういった免疫細胞が動脈硬化の進展に強く関わっているのかや本治療において、どのような免疫細胞が強く関与しているのかについても検討を行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動脈硬化における血管内皮抗原における免疫応答の役割を確認するために、LDL受容体欠損マウスにHSP65を免疫したところ、HSP65の免疫により動脈硬化が加速されることがわかりました。動脈硬化が加速したモデルでは、HSP65に対して特異的な免疫反応は有意に活性化されていましたが、それ以外の非特異刺激に対しては有意な活性化は認めませんでした。HSP65に特異的な免疫反応が動脈硬化を進行されるモデルマウスを使用して、制御性T細胞を除去するためにCD25抗体をHSP65で免疫する前に投与したところ、動脈硬化の進行を認め、また、HSP65に特異的な免疫反応が有意に活性化されておりました。このことから制御性T細胞が本モデルマウスにおいて、HSP65に特異的な免疫反応を抑制していることがわかりました。次にマクロファージの働きを検討するためにマクロファージを除去するためのクロドロネートを用いてHSP65免疫前と後で使用したところ、使用前後に関係なく、動脈硬化の進行は抑制されました。マクロファージが本モデルマウスにおいて、病態の促進に関与していることがわかりました。このことから、本モデルマウスにおける各免疫細胞の機能は本年度で明らかになりました。 一方で、課題なのは、動脈硬化巣における各免疫細胞の機能評価が困難であり、確立できていないという点です。現時点では、動脈硬化巣の免疫細胞をプールし、免疫細胞のmRNAレベルや蛋白レベルでのサイトカインの発現の経時的変化を検討する方法で検討しております。その結果、MCP-1やIL-6の産生能は増加し、IL-10も増加することを認めました。これらの発現はCD25抗体を使用した実験では発現は上昇し、クロドロネートを用いた実験では逆に低下を認めました。FACSによる解析あるいは免疫細胞の種類にわけてmRNAや蛋白レベルを検討は今後の検討課題です。
|
Strategy for Future Research Activity |
HSP65抗原に特異的な免疫抑制療法の有効性を確認していく実験と平行して実験の技術を向上させていきます。具体的にはT細胞除去抗体であるCD4抗体やCD8抗体を使用したり、B細胞除去抗体としてCD20抗体を使用する。抗体投与に引き続きHSP65を隔日投与で6日間投与を行います。現時点では動脈硬化巣に浸潤している免疫細胞のmRNAレベルや蛋白レベルでのサイトカインの発現の経時的変化を検討はH28年の実験により可能になりましたので、、MCP-1やIL-6、IL-10に関して検討を行います。また、除去抗体とHSP65の併用療法により、実際に、HSP65抗原に特異的な免疫抑制が行われているのかどうか検討します。HSP65抗原に特異的な免疫抑制療法の治療過程においては、マクロファージから大量のTGFbが産生され、それに続いてTGFb依存性にHSP65抗原特異的な制御性T細胞と制御性B細胞が体内で誘導され、それらの細胞が炎症局所に集積して炎症を抑制しているかどうか、仮説を検証します。
|
Causes of Carryover |
元々は物品費(おもにFACSの抗体や除去抗体など)が主な直接経費であったが、実験の遅れにより、抗体を使用する実験(もともとH29年度に実施予定)は先延ばしになっていることで抗体の購入も遅らせている。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度に実験の進行に伴い、物品費を使用する予定である。
|