2016 Fiscal Year Research-status Report
グルタミン代謝による活性化 T 細胞運命決定機構の解明
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16K19158
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
桑原 誠 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教(病院教員) (00568214)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 活性化 T 細胞運命決定 / グルタミン代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは、抗原刺激により T 細胞内グルタミン酸 (Glu) 濃度が 100 倍以上増加することを見出だした。また、T 細胞の活性化に伴い Glu 生合成を触媒するアスパラギン合成酵素 (Asns)、グルタミナーゼ (Gls)、アラニンアミノ基転移酵素 (Alt)、アスパラギン酸アミノ基転移酵素 (Got) の発現が強く誘導されることがわかった。これらの結果より、活性化 T 細胞においてグルタミン代謝が亢進していることが考えられた。続いて、Th 細胞サブセット分化におけるグルタミン代謝の役割を解析した。グルタミン無添加培地 (dGln) を用いた in vitro 分化誘導系では Th2 細胞分化が低下し、α-ケトグルタル酸 (α-KG: グルタミン代謝産物) の添加によってその分化が回復した。さらに、Asns、Gls、Alt、Got の阻害剤により Th2 細胞分化が阻害された。これらの結果から、Th2 細胞分化にグルタミン代謝が重要であることが示された。次に、グルタミン代謝を介した Th2 細胞分化誘導機構を検討した。dGln 条件において、Th2 サイトカイン遺伝子座におけるヒストン H3K27me3 (抑制性マーク) レベルが低下せず抑制状態が維持されていること、α-KGによりその抑制状態が解除されることがわかった。α-KG は H3K27me3 の脱メチル化酵素 Utx の補因子として作用することから、α-KG 依存的 Th2 細胞分化誘導における Utx の関与を検討した。dGln 条件によるα-KG の Th2 細胞分化の回復は、Utx 欠損により部分的に抑制された。これらの結果から、グルタミン代謝の活性化は、Utx による Th2 サイトカイン遺伝子座の H3K27me3 の脱メチル化を促進し、Th2細胞分化を誘導するのに重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究申請では、グルタミンとその代謝産物のヘルパー T 細胞分化、メモリー T 細胞分化、T 細胞老化における役割を解析し、抗原刺激後のグルタミン代謝亢進による、活性化 T 細胞内エネルギー代謝状態の統合的制御機構を解明する。具体的には、エピゲノム変化誘導を介した活性化 T 細胞の運命制御における 1) グルタミン代謝関連酵素の役割、2) α-KG を中心としたグルタミン代謝産物の役割について検討する。これに加え、3) 抗原刺激を起因としたグルタミン代謝変化を感知し、細胞内エネルギー代謝を統合的に調節しているグルタミン代謝センサーの同定を目指す。平成 28 年度は項目1、平成 29 年度以降は項目 2、3 の解析を計画申請した。 当該年度は、研究実績の概要に記したように、グルタミン代謝とその関連酵素が Th2 細胞分化に重要であることを明らかにすることができた。グルタミン代謝産物である α-KG はヒストン H3K27me3 の脱メチル化酵素 Utxに作用し、Th2 サイトカイン遺伝子座のエピジェネティク変化を誘導していることもわかった。さらに、グルタミン除去培地やグルタミン代謝関連酵素の阻害剤を用いた解析から、グルタミン代謝は Th17 細胞分化の促進、iTreg 細胞分化の抑制に関与していることもわかってきた。加えて、老化 T 細胞モデルである腫瘍抑制因子 Menin 欠損活性化 T 細胞の老化 T 細胞様形質の獲得を抑制することも明らかになってきた。また現在、T 細胞特異的グルタミン代謝関連酵素欠損マウスの作製が完了し、その解析に着手している。次年度以降、これらの欠損マウスの解析を継続し、グルタミン代謝酵素の役割を明確にする予定である。以上、平成 28 年度の研究状況から本申請研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
T 細胞特異的グルタミン代謝関連酵素欠損マウスを解析する。基礎検討より、Gls1、Gls2 それぞれを欠損した CD4 T 細胞では Th2 細胞分化が抑制されなかった。Gls1 と Gls2 が代替的に作用している可能性が考えられ、Gls1 と Gls2 のダブル欠損マウスを作製し、Gls の役割解析を行う。また申請者らは、抗原刺激後早期 (2~4 時間) に Asns が発現誘導されることを新たに見いだした。グルタミン代謝の亢進が Th2 と Th17 のエフェクター T細胞 (Teff) 分化を促進し、 iTreg 細胞分化を抑制することから、Asns を介したグルタミン代謝の活性化度合いによって、 Teff と Treg の分化が制御されていることが想定される。そこで、Asns 欠損 CD4 T 細胞および Ansn 強制発現系を用い、Teff と Tregの分化における Asns の役割を解析する。 上記の代謝酵素の役割解析と並行して、グルタミン代謝産物α-KG 依存的エピゲノム変化による活性化 T 細胞運命決定機構の解析を行う。具体的には、α-KG 依存性ジオキシゲナーゼである H3K27me3 特異的脱メチル化酵素 Utx と Jmjd3 の T 細胞特異的欠損マウスを用い、Th 細胞サブセット分化、メモリー T 細胞分化を検討するとともに、T 細胞特異的な Menin との二重欠損マウスを作製し、 T 細胞老化を解析する。 上記のグルタミン代謝関連酵素とα-KG の活性化 T 細胞運命決定における役割が明確になった後、抗原刺激依存的なグルタミン代謝を感知するセンサー (グルタミン代謝センサー) の解析を行う。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Bach2-Batf interactions control Th2-type immune response by regulating the IL-4 amplification loop2016
Author(s)
Makoto Kuwahara, Wataru Ise, Mizuki Ochi, Junpei Suzuki, Kohei Kometani, Saho Maruyama, Maya Izumoto, Akira Matsumoto, Nobuaki Takemori, Ayako Takemori, Kenta Shinoda, Toshinori Nakayama, Osamu Ohara, Masaaki Yasukawa, Tatsuya Sawasaki, Tomohiro Kurosaki, Masakatsu Yamashita
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 7
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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