2017 Fiscal Year Research-status Report
SLEの治療法開発に向けたIRF5選択的制御メカニズムの解明
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16K19161
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
藩 龍馬 横浜市立大学, 医学部, 助教 (50635357)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自然免疫応答 / 転写因子 / IRF5 / 自己免疫疾患 / 全身性エリテマトーデス (SLE) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、自然免疫系におけるIRF5選択的な制御メカニズムを明らかにし、SLEの治療法に繋がる新規の分子標的を同定することを目的とする。平成28年度までの研究により、IRF5の活性化経路に対し選択的に働く阻害剤の一つとしてMAPキナーゼ (MAPK) 阻害剤を見出し、さらにMAPKの下流で働くキナーゼ (MAPK-APK) の阻害剤の一つがIRF5の活性化経路に対し選択的に働くことを明らかにした。 平成29年度では、上述のMAPK阻害剤とMAPK-APK阻害剤の作用機序解析ならびにin vivoにおける薬効評価を行った。IRF5の活性化に重要なイベントであるリン酸化、二量体化および核移行に与える影響を解析した結果、MAPK阻害剤はこれらのイベントを阻害しなかった。したがって、MAPK阻害剤は核移行以後のIRF5活性化イベントにおいて作用していることが示唆された。一方で、MAPK-APK阻害剤はIRF5の二量体化と核移行を部分的に阻害した。MAPK-APK阻害剤はIRF5タンパク質の分解を誘導しており、これによりIRF5の二量体化と核移行が部分的に阻害されていることが判明した。また、MAPK-APK阻害剤もIRF5の核移行以後のイベントで作用していることが示唆された。本成果はSLEの新規治療法開発に繋がる分子標的の同定のために重要であると考えられる。今後はIRF5活性化経路のうち核内のイベントにおけるMAPK阻害剤とMAPK-APK阻害剤の作用点を明らかにしたい。In vivo薬効は、野生型マウスのTLRリガンド投与時におけるサイトカイン産生に与える影響を評価し、いずれの阻害剤もこのサイトカイン産生を顕著に抑制することが判明した。今後はSLEモデルマウスにおける薬効を評価する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度および30年度における研究実施計画では、IRF5選択的制御に関わる分子について、その作用メカニズムを詳細に解析してIRF5選択性の高い標的分子を見出すこと(1)、またその標的分子に関してSLEモデルマウスを用いて治療標的としての有効性を検討すること(2)を計画していた。計画(1)については、MAPKの下流で働くMAPK-APKがIRF5経路を選択的に活性化させる因子であることが示唆され、その作用機序としてIRF5の核移行以後の核内におけるイベントでIRF5の選択的活性化に関与することが明らかとなった。計画(1)ではIRF5の複合体解析を行うことも予定していたが、平成29年度の研究結果から核内のIRF5複合体を解析対象にするべきであることが分かった。計画(2)については、SLEモデルマウスの解析の前に野生型マウスを用いて、MAPK阻害剤とMAPK-APK阻害剤がin vivoにおいてTLRリガンド投与時におけるサイトカイン産生を抑制することを示した。また、計画(2)ではIRF5コンディショナル欠損マウスの解析も予定しており、平成29年度はタモキシフェン投与によりIRF5タンパク質が顕著に減少する条件を決定した。 以上のように、IRF5複合体解析は実施できなかったが、メカニズム解析により今後の方針を定めることができ、またそれ以外は平成29年度以降の研究実施計画通りに研究を進めることができたため、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度では、研究実施計画の通り同定したIRF5選択的制御に関わる責任分子 (MAPKおよびMAPK-APK) について、その作用メカニズムの詳細を解析し、よりIRF5選択性の高い標的分子を見出す。その標的分子に関して、SLEモデルマウスを用いて治療標的としての有効性を検討する。 「IRF5選択的制御メカニズムの解析」における作用点の解析では、平成29年度の研究結果を踏まえ、IRF5選択的制御に関わる責任分子がIRF5活性化経路のうち核内のどのイベントに関与するのかを詳細に検討する。また、核 (クロマチン) におけるIRF5の複合体を単離し、質量分析などにより構成分子を解析する。新たに得られた分子がより高いIRF5選択性を示す場合、この分子を標的分子とする。 「In vivoにおける標的分子のバリデーション」におけるIRF5 cKOマウス解析では、平成29年度で実験条件を決定したIRF5-cKO SLEモデルマウスを用い、SLE病態を発症させた後でIRF5を欠損させ、IRF5の抑制がSLEの治療にも有効であることを確認する。SLE病態は血中の抗DNA抗体価や糸球体腎炎など複数の指標から評価する。SLEモデルマウス解析ではLyn欠損マウスなどのSLEモデルマウスを用い、標的分子を阻害することでSLE病態が抑制されるかを検討する。標的分子は阻害剤、siRNAによるノックダウンにより阻害する。IRF5の活性化が抑制されているかなど、in vivoの細胞を用いた解析も行う。
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Remarks |
〔受賞〕 ・横浜市立大学医学研究奨励賞, 横浜市立大学医学会, 2017年5月20日. ・Milstein Young Investigator Award, International Cytokine & Interferon Society, 2017年10月31日.
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] Selective suppression of IRF5 activity by Lyn in the TLR-MyD88 pathway restrains the development of SLE-like disease2017
Author(s)
Ban T, Sato GR, Nishiyama A, Matsunaga S, Kimura A, Kimura Y, Yanai H, Matsumoto Y, Hihara H, Yamamoto T, Hirano H, Ryo A, Tsukahara K, Yoshimatsu K, Taniguchi T, Tamura T
Organizer
Cytokines 2017 (5th Annual Meeting of the International Cytokine & Interferon Society)
Int'l Joint Research