2016 Fiscal Year Research-status Report
生理活性ペプチドサリューシンβの超高感度測定法の開発とその病態生理学的役割の解析
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16K19202
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
藤本 和実 北里大学, 大学病院, 臨時職員 (50769297)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生理活性ペプチド / サンドイッチELISA |
Outline of Annual Research Achievements |
新規生理活性ペプチド探索法であるin silico探索法によって初めて同定されたサリューシンβ は一般的に使用される器具(プラスチック、ガラス問わず)に吸着する性質をもつ。このような性質は従来の生理活性ペプチドにはみられない、本ペプチド特有の性質であり取り扱いが難しく血中濃度測定系の確立は困難を極めた。本ペプチドは培養細胞や実験動物を用いた検討から動脈硬化促進作用があることが報告されており、新規疾患マーカーとしての役割が期待されていたが、ヒト血中濃度を正確に測定する手段がこれまで存在しなかった。今回、サリューシンβの超高感度免疫複合体転移法を用いた測定系を開発し、質量分析にて血中に存在することを確認したサリューシンβフラグメントペプチドと併せてヒト血中遊離サリューシンβ濃度の測定を可能とし、心血管疾患・内分泌代謝疾患におけるバイオマーカーとしての有用性を示すための基礎的検討を行うことを目的としている。 当該年度はヒト血漿を抽出操作をせず、希釈操作のみで血中に存在する遊離サリューシンβを検出する測定系を構築し、健常者血中濃度、生理的変動の有無を検討する、さらに本ペプチドは発見当初より副交感神経刺激因子の可能性が示されていることにも注目し、健常者における日常生活での副交感神経の動きとの相関性についての検討を予定していた。当研究室で作製した2種類の抗サリューシンβ抗体を用いて高感度測定系を構築するために次に述べる3点の基礎的検討を行い、(①固相抗体、検出抗体の最適濃度の決定 ②吸着防止剤(界面活性剤)の最適濃度の決定 ③標準曲線と正常ヒト血漿希釈曲線との平行性の確認)血中に存在するサリューシンβを測定することに成功した。本測定系を用いて健常者血中濃度、副交感神経刺激試験前後の血中濃度の測定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画時にELISA系測定がうまくいかなかった場合について対応策を示したが、本ペプチド特有の吸着性を回避するために使用する界面活性剤が0.02%という低濃度に存在しても抗原抗体反応を阻害した。界面活性剤を低濃度にしすぎると本ペプチドは実験器具へ吸着するため、完全に除去することができない。吸着を防ぎかつ抗原抗体反応を阻害しない最適な界面活性剤の選択ならびに最適濃度の検討に予想以上に時間を費やすこととなったが、測定系の構築には成功した。 本測定系を用いて各種検体を測定し、データを収集し解析しているところであり、おおむね予定通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画で予定していた健常者症例の生理的変動を検討する症例数がやや不足しているので、引き続き収集する。 本研究計画の予定通り、質量分析により観測された7種類のサリューシンβフラグメント認識抗体の作製は既に進めている。各フラグメントにポリクローナル抗体を作製し、アッセイに適した抗体価以上であるか確認する。抗血清からのIgG精製および酵素標識はイオン交換クロマトグラフィーやゲルろ過クロマトグラフィーを行う。 今回試みたアッセイ系確立のノウハウを生かし、サリューシンβ断片ペプチドに対する測定系を構築する。培養細胞、実験動物を用いて各フラグメントの生理活性を検討し、サリューシンのアミノ酸配列のうちのどの部分がこれまで報告された様々な作用(強力な降圧作用、徐脈作用、動脈硬化促進、副交感神経刺激作用など)を司っているか考察する。ヒト血中濃度についても全長の検討と同様、健常者、副交感刺激試験前後、動脈硬化性疾患の各検体について各フラグメントの血中濃度を測定し比較し、どのフラグメントがどのような機能を担っているのか循環動態を詳細に解析していく予定である。
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Causes of Carryover |
申請した研究計画を遂行するために次年度分も本助成金を必要とする。次年度は研究計画完了年であるため、実験に必要な消耗品だけでなく、論文投稿料、学会発表に必要な経費(学会参加費、出張費)が生じる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画書に記載の通り進めるために次年度分の研究消耗品としてはイオン交換クロマトグラフィー用担体 アフィニティー精製用担体 ポリスチレンビーズ、 96 ウェルプレート、 実験試薬、ピペット類、チップ、マイクロチューブ、ディスポーザブル遠沈管類、抗体精製キット、酵素標識キット、抗血清作製代、ペプチド合成代に費用がかかる予定である。 論文発表については英文校正料、論文投稿料を予定している。研究成果発表の機会として学会発表を予定している(日本心脈管作動物質学会、日本心血管内分泌代謝学会)
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