2016 Fiscal Year Research-status Report
再生医療材料評価に向けたマイクロフォーカス軟X線装置へのK吸収端フィルタの実装
Project/Area Number |
16K19225
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 浩章 東京大学, 医学部附属病院, 診療放射線技師 (20420218)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 軟X線 / K吸収端 / X線スペクトル / 骨密度 / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
再生医療において、X線計測は非侵襲的な方法として期待されている。本研究では、生体高分子材料の画像化と骨塩量評価が可能なマイクロフォーカス軟X線装置の試作を目標に、①K吸収端フィルタリングパラメータ(フィルタ種とその厚さに関するパラメータ)及び管電圧パラメータの数値シミュレーション、②準単色軟X線による高コントラスト画像の取得、③準単色二重エネルギー軟X線を利用した骨密度量の定量的計測法の精度検証を目的としている。X線エネルギーの準単色化にはK吸収端フィルタの選択と管電圧に関する適切な条件設定が必要となる。平成28年度は、基礎的検討としてマイクロフォーカス軟X線装置の連続X線に対して、Tuckerらの連続X線スペクトル理論式を用いて、K吸収端フィルタによる連続軟X線の準単色化及び二重エネルギー化に最適なフィルタリングパラメータと管電圧パラメータに関する数値計算を行った。数値計算においては、単一フィルタを用いた場合に最も光子計数効率が良好で、かつ高いエネルギー単色性が得られるフィルタリングパラメータと管電圧パラメータを求め、これを準単色化パラメータとした。定量的計測法において重要となるX線スペクトルの二重エネルギー化においては2種類のK吸収端フィルタを用いることを予定し、前述の準単色化パラメータを元にしてフィルタリングパラメータと管電圧パラメータの計算を行った。さらに、数値計算のパラメータを元にゲルマニウム半導体検出器によるX線スペクトル計測を実施し、数値予測にあったX線スペクトルを得た。現在はこれらの研究成果の応用として、従来の軟X線と準単色軟X線を用いて生体高分子材料と同等のX線吸収を有する階段状に積層した塩化ビニルの高コントラスト画像の取得を試み画質評価を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フィルタリングパラメータと管電圧パラメータに関する数値計算から、ゲルマニウム半導体検出器によるX線スペクトル計測まで完了した。まず、金属フィルタ材料として、対象としている軟X線エネルギー領域においてK吸収端を有する遷移金属元素のうち、腐食性、有害毒性等がなく比較的安価な元素を選定した。次に数種類の金属フィルタに対して準単色化パラメータとしてフィルタリングパラメータと管電圧パラメータを数値計算にて算出した。準単色二重エネルギー軟X線については、準単色化パラメータを元にしてK吸収端フィルタの組み合わせごとの管電圧パラメータを決定し、その管電圧にて各K吸収端フィルタを単独で用いた場合のフィルタ厚パラメータについて計算を行った。さらに減弱係数の小さい金属にてフィルタ厚パラメータの微調整を行い二重化が可能なパラメータを決定した。以上の結果は平成28年度に当初予定していた研究計画であり、当該研究課題は順調に遂行できていると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
応用的計測法として、準単色軟X線を用いた生体高分子材料の高コントラスト画像の画質評価及び準単色二重エネルギー軟X線による骨密度量の定量性に関する計測精度を算出することを当初の研究計画とする。骨密度計測用代替物質としてはアクリル(軟部)及びアルミニウム(骨部)を用いる予定である。平成29年度は、これらの実験を年度早期に完了させ、残りの期間は研究結果の取り纏めと、当該研究課題の総括として学会発表、論文誌等による研究成果の公表に関する作業に充てる予定である。
|
Causes of Carryover |
当初購入予定であった種々の金属フィルタ及びX線スペクトル計測に必要な消耗品等を研究協力施設に備わっている物品にて対応することが可能であったため、研究経費のうち消耗品費について余剰が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の進捗はおおむね順調であり、研究計画の変更等は生じていない。平成28年度経費の残額については、少額ではあるが繰り越すことにより平成29年度において積極的な研究成果の公表に資することができると思われるため、旅費、論文作成に関する英文校正及び投稿料に充当する予定である。
|