2017 Fiscal Year Research-status Report
最先端プロセスによる次世代型高精度水吸収線量計測法の確立
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16K19238
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Research Institution | Tsukuba International University |
Principal Investigator |
志田 晃一 つくば国際大学, 医療保健学部, 講師(移行) (50734050)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 医学物理学 / 高精度放射線治療技術 / 水吸収線量 / 液体電離箱 / 標準計測法 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、昨年度から継続して液体電離箱線量計に関する研究と、電子線におけるモンテカルロシミュレーションを行った。 当該年度までの過程で、液体電離箱線量計が本研究における最重要検討事項であることが明確であったことから、液体電離箱線量計の入手を再度試みた。 商用の液体電離箱線量計はメーカーからの供給が終了しており、やはり入手が困難であることから、液体電離箱線量計の作成を検討した。だが、材料・製造方法等を何度か検討したものの、本研究の予算での作成は困難との見積もり結果が出たため、前年度同様、メーカーより液体電離箱線量計を借用するという代替え案のもと、実測をベースとした研究を進めた。そして、昨年度の研究結果で示唆された電子線場での測定を引き続き実施した。平行平板電離箱線量計と液体電離箱線量計で電子線の測定を行い、両者を比較した。 一方で、モンテカルロシミュレーションを行うために当初から計上していた高性能ワークステーションを当該年度で購入した。そして、ワークステーションを用いて6MeVおよび9MeV電子線モンテカルロシミュレーションを実装した。その結果、前年度に液体電離箱線量計で測定した吸収線量比はモンテカルロシミュレーション結果に近い値となった。つまり、通常の電離箱線量計では測定値に阻止能比という補正係数をかけなければ吸収線量比を取得できないのに対し、液体電離箱線量計ではこの阻止能比がなくとも直接吸収線量比を計測できるということである。この事により、不確定度要因の1つを排除でき、精度の高いデータを収集可能であることの裏付けになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の進捗はやや遅れている状況である。 当該年度は、本研究者が所属する学科において初の国家試験受験および卒業生が出る年度となり、前年度と比較すると業務量(教育)が激化し、結果として研究エフォートを充分に維持できなかった。それに加え、実験施設が医療機関のため、放射線発生装置の使用および実験は臨床時間外が前提となるが、この時間の調整が非常に難しく、当初の予定よりも進まないという結果になった。 モンテカルロシミュレーションに関してはワークステーションを購入したことにより、簡易的ではあるが、電子線において実装が可能となり、実測結果との比較ができた点においては多少なりとも進んでいると言える。 以上から総合すると「やや遅れている」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度までで電子線において直接吸収線量比を測定できることがおおむね証明できた。今後はX線におけるモンテカルロシミュレーションを実行し、X線場においても精度の高い計測ができるとの証明をしたい。 その後は遅れている課題の推進のため努力したい。つまり液体電離箱線量計内の有機溶媒のイオン密度・移動度を物理化学の観点から推測・解明することである。実際の測定にこの影響がどのくらい出ているのか見積もることが出来れば、従来の電離箱線量計を用いての測定よりも更に高い精度で吸収線量を算出が可能となる。 最終的には水吸収線量を求めるために重要な係数である線質変換係数kQを導き出すのが目標である。
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Causes of Carryover |
(理由) 教育業務多忙のため、研究エフォートを達成することができなかったこと、および計上していた学会参加費用の使用が少なかったため。 (使用計画) 研究継続のための経費と学会における研究実績の発表費として使用する予定である。
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