2016 Fiscal Year Research-status Report
治安に対する不安が高齢者の健康に与える影響に関する大規模縦断研究
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16K19247
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| Research Institution | The University of Tokyo |
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Principal Investigator |
高木 大資 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (10724726)
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| Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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| Keywords | 犯罪不安 / 社会疫学 / 高齢者 / 健康 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高齢者を対象とした大規模縦断調査から得られたデータを用いて、わが国における地域の犯罪不安と高齢者の健康の関連について、そのメカニズムを説明するものである。これを通じ、日本における治安対策は、刑法犯認知件数の減少という犯罪学的政策課題であるだけでなく、高齢者の健康と関連する公衆衛生学的な課題でもあることを示す。
本年度は、日本老年学的評価研究（JAGES）プロジェクトにおける既存の約4万人の2時点縦断データ（2010年および2013年の郵送調査データ）を用いて、2010年時に測定した犯罪不安が、2013年時の心理的要因（うつ）、行動的要因（外出頻度、外歩きの時間）、社会関係的要因（他者への信頼、他者への援助行動、社会参加）を予測することを確認した。加えて、犯罪不安がそれら3つの要因を媒介して、2013年時の主観的健康と関連することを確認した。さらに、実際の犯罪件数である刑法犯認知件数は上記の3要因および健康アウトカムとは関連しないことが示された。ここから、公衆衛生学的な観点からは、実際の犯罪件数と人々が感じる犯罪不安は異なる社会的帰結を持つものであることが示唆された。これらの分析結果について、英語論文を作成中であり、平成29年度には公表する見通しである。また、上記メカニズムについて、より正確な因果関係を明らかにするために、第3波にあたる縦断調査を郵送法により行った。
最終年度である次年度は、本年度行った調査のデータを整備し、3時点のデータを用いたパス解析を行い、各変数間の因果関係の特定を行う。また、本年度の分析に用いた健康アウトカムに加えて、要介護認定日や死亡日などを用いた比例ハザードモデルによる分析も実施する予定である。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画の通り、既存のデータを用いて、犯罪不安と健康に関するモデルの妥当性を確認した。また、第3波となる郵送調査は予定通り完了しており、現在データクリーニング中である。データの整備が完了し次第、3時点パネルデータによる分析に着手することが可能である。ここまでは予定通りに研究を進めることができているため、概ね順調であると考えている。
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| Strategy for Future Research Activity |
研究は計画通りに進展しているため、計画書に記載の通りの内容で進める。
3時点のパネルデータを用い、本年度の分析で確認された犯罪不安から健康への心理的経路、行動的経路、社会関係的経路が、犯罪不安と健康の関連をどの程度説明するのかを明らかにするために、それぞれの経路の媒介量を算出する。また、犯罪不安の多寡が、長期的には要介護リスクや死亡リスクにまで影響を及ぼすのかを検討するために、2010年のデータをベースラインとしたコホートデータを分析する。具体的には、2010年に調査対象となった回答者を6年間追跡し、調査自治体の協力のもと要介護認定日および死亡日のデータを用い、犯罪不安が高かった人・地域で実際に死亡・要介護のリスクが高くなるのかを比例ハザードモデルにより検討する。
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| Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、まず、当初の予定では第3波目となる大規模縦断調査の実施に多くの費用を要する見込みであったが、より少額にて予定通りの人数のデータを収集できたことがあげられる。また、研究会・学会が東京近郊で開催されることが多く、出張費を要さなかったため、旅費が発生しなかったことがあげられる。加えて、現在英語論文の執筆中であるため、本年度中には英語校正費および出版費を要しなかったためである。
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
大規模調査自体は終了したが、データクリーニング、自治体から提供される死亡日・要介護認定日データとの結合など、分析のためのデータ整備を引き続き行う必要がある。未使用額はその経費に充てる予定である。
また、本研究の結果はもともと発表予定であった疫学系の分野の学会だけでなく、犯罪学や都市計画系などの関連領域の学会でも発表する価値があると思われるため、それらの多様な学会での発表のための旅費として使用することを計画している。現在執筆中の英語論文が完成した際には、英文校正・出版費としても使用する予定である。
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Research Products
(1 results)
