2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K19249
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
小椋 透 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (00580060)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 実質水準 / 分割表 / ベイズ法 / マクネマー検定 / メタアナリシス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、平成28年度の研究成果の対応のある2×2分割表のベイズ型の検定方法を拡張して、対応のある3×3分割表のベイズ型の検定について研究を進めた。ここでの3×3分割表は、有効・無効・欠測の3水準の場合とした。同一被験者が二つのテストを行い有効又は無効の判定をされるが、片方のテストしか行わなかった被験者がおり、行わなかった方のテストが欠測となる。欠測ありの分割表についてもBayes的方法で表現できることが示されていることを用いて、3×3分割表のベイズ型の検定方法の研究を行った。 2×2分割表の検定では事後分布をベータ分布で表すことができるが、3×3分割表の検定では事後分布をディリクレ分布で表すこととなる。さらに、事後確率を検定統計量とすると、その検定統計量にはパラメータが含まれる。ベータ分布の時は2パラメータであったが、ディリクレ分布では4パラメータある。平成28年度の研究成果では2パラメータが同じ値の時によい結果が得られたことから、ここでの4パラメータも全て同じ値として研究を進めた。また、通常は「T≧1-α」(α:有意水準)の枠組みで棄却域を決められることが多いが、本研究では「T≧1-α’」(α≠α’)の枠組みで棄却域を決めることとした。このとき、α’は有意水準を厳守しながら実質水準がなるべく高くなるように定めた。3×3分割表の場合は計算式が複雑になることから、計算時間が長くなるが、データに対して計算を1度行う場合には十分に許容できる時間であった。 シミュレーションや実例などを用いて有効性を検証して、研究成果は統計関連学会連合大会で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は有意水準を厳守した上で実質水準の高い検定法にマクネマー検定を改善することを目的としていた。事後確率を検定統計量とすると、その検定統計量にはパラメータa, bが含まれる(a=b=0.25, 0.5, 1のpriorを用いて検討した)。通常は「T≧1-α」(α:有意水準)の枠組みで棄却域を決められることが多いが、本研究では「T≧1-α’」(α≠α’)の枠組みで棄却域を決める。このとき、α’は有意水準を厳守しながら実質水準がなるべく高くなるように定めた。理論的な妥当性を示すことに成功しており、サンプルサイズごとの性能比較も行った。n=10ではa=b=0.5の実質水準が一番高く、n=20, 30ではa=b=0.25の実質水準が一番高かった。a=b=0.25, 0.5はn=40をピークに以後はnが増えると実質水準は単調減少の傾向があった。a=b=1は周期的に実質水準の高低を繰り返しており、nによって実質水準が一番高いこともあれば、一番低くなることもあった。臨床試験で症例数は試験開始前に定まることから、その症例数と照らしながら最適なpriorを選択することは可能である。 平成29年度は2×2分割表の検定方法を拡張して、3×3分割表の検定方法の研究を行った。ここでの3×3分割表は、有効・無効・欠測の3水準の場合とした。2×2分割表の検定ではベータ分布として取り扱えたが、3×3分割表の検定ではディリクレ分布を用いることとなった。基本的な個所は2×2分割表の研究成果を用いることができるが、3×3分割表だと計算式が複雑になるため計算の工夫が必要となった。研究成果は統計関連学会連合大会で公表した。 統計関連学会連合大会で講演したところ、他の研究者から信用区間についてもベイズ法を適用できると貴重なコメントを頂いた。本研究課題に信用区間のことも含めることでよりよい研究成果が得られると考えられる。補助事業期間を延長して、信用区間の研究を行うこととし、結果を学会や論文で公表する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、平成28年度と平成29年度の研究成果を生かして、二項割合の信用区間を改良する。検定と推定は密接に関係しており、本研究課題に信用区間のことも含めることでよりよい研究成果が得られると考えられる。二項割合の区間推定方法として、Clopper-Pearson信頼区間はよく用いられるが、エラー確率がαより小さいこと(言い換えると信頼区間の幅が広いこと)が知られている。先行研究の区間推定方法として、ベイズ法を用いた信用区間が提案されており、この信用区間のエラー確率が平均的にαであるように定められている。また、信用区間には複数の算出方法が提案されており、(i)両裾確率が等しい信用区間、(ii)最高事後密度区間 (Highest posterior density, HPD) の方法がよく用いられる。さらに、信用区間はどのような事前分布を用いるかで結果が異なる。既存の信用区間は、発症数x=0が観測されたときに下限値が0となる。Rule of Threeとして知られているように、x=0が観測されても母集団における発症割合が0と断言できないことは知られている。信用区間においても、x=0が観測されても下限値が0を超えている方が妥当と考えられる。 本研究では、二項確率のロジット変換を用いた事後分布によるHPD 区間を算出し、その区間を逆ロジット変換した区間を二項確率の信用区間とする方法を提案する。この方法を用いるとx=0が観測されても下限値が0を超えることとなる。シミュレーションや実例などを用いて有効性を検証する。
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Causes of Carryover |
統計関連学会連合大会で講演したところ、他の研究者から信用区間についてもベイズ法を適用できると貴重なコメントを頂いた。本研究課題に信用区間のことも含めることでよりよい研究成果が得られると考えられる。信用区間の研究で成果を出して、国内学会等で発表するために旅費と参加費、論文作成に関する費用(英文校正費など)を計上する。
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Research Products
(2 results)