2016 Fiscal Year Research-status Report
携帯メールを利用した胆道閉鎖症の便色スクリーニングシステムの構築
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16K19260
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
済陽 寛子 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (60589539)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 胆道閉鎖症 / 灰白色便 / スクリーニング / 便色カラーカード / 写真 |
Outline of Annual Research Achievements |
胆道閉鎖症は新生児期に発症する、胆管閉塞により胆汁を排出できない疾患である。1万人当り1人の罹患率と稀な疾患であるが、乳児期の肝・胆道系疾患では最も死亡率が高い。肝門部空腸吻合術(葛西手術)により自己肝での生存も期待されるようになり、生後30日以内に葛西手術を行うことは、予後を向上させると考えられている。新生児期での発見は困難で、ときには3か月以降に発見され、葛西手術では奏効せず、肝移植に移行する事例が多い。出生時には徴候がなく、生後1か月ごろに症状(黄疸、灰白色便)がようやく顕著となる胆道閉鎖症では1か月健診のタイミングで異常に気付かれにくく適切な時期に検知することが困難であった。平成 24 年 4 月から母子手帳とともに便色調カラーカードが全国的に配布されるようになったものの、1か月健診を過ぎて便色異常を検知される症例が多くみられている。肝機能障害が重症化しない時期の根治術(葛西手術)を行うことは予後の向上が期待され肝移植を回避できる可能性がある。 本研究ではより客観的かつ迅速な判断による早期診断を目指し、現行の便色調カラーカードと携帯写真・メールを併用した便色評価で専門家の目でスクリーニングできる有効な検知システムを構築することを目的とした。カードとおむつを一緒に撮ることによる校正処理と半永久的な保存が可能になり、経年劣化による偽陰性判定の抑制や後日の再確認も可能である。 日常的に携帯電話のカメラ機能を使用している親であれば本法での操作は簡便であり、スクリーニング法として受け入れやすいと考えられる。本法は発症の可能性のある期間に繰り返し受けることができ、継時的に比較判断できることで判定効果が向上すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本疾患の発症は全国で100人/年の頻度であるため、調査期間に当方法で疾患が発見される可能性は低く、現時点での対象者では胆道閉鎖症や胆道疾患は検知されていない。しかし当法は既存の便色調カラーカードを利用していること、侵襲なく行えることで参加を得られやすくスクリーニング法として効果的と考えらえる。健診とは違うタイミングで母がメールを送ることができる当法では、昼夜問わず、また1か月健診を過ぎた時期であっても複数回にわたり写真を受け付けることができ、母親の負担を軽減できていると考えられる。実際の胆道閉鎖症の症例には便色カラーカードに提示されている「正常」の色調の便を呈する児も散見されるため、評価基準の検討や慎重なフォローアップ体制を構築する必要性が考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当研究において母の評価した番号(色調)と医師の評価した番号はおおむね一致するが、撮影条件や主観により差異が生じるケースもあるため、完全に一致しない場合をふまえ判定精度の向上について検討を要する。また色調の判定は専門の医師が行うことが望ましく、スクリーニング法としては迅速に多数の写真を評価し通知する体制についても検討を要する。「便色」は徴候の一つであり便色のみで胆道閉鎖症を診断するには限界がある。血液検査、尿検査、画像検査といった他の客観的評価法を併用する必要があり、無侵襲・低コストである当法はスクリーニングという位置づけにおける効果的な評価体制を構築していく必要がある。
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Causes of Carryover |
人件費を計上していたが人員の確保が困難であった。分担して行う予定であった業務は変更または研究者が行うこととしたため次年度使用額が生じている。また、学会発表を次年度に予定しており、本年度に計上していた旅費を次年度に使用予定としている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果について学会発表を予定しており、旅費、論文作成費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)