2016 Fiscal Year Research-status Report
マウスES細胞由来の幼若な神経におけるアルコール曝露下での網羅的遺伝子発現解析
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16K19273
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
栄徳 勝光 高知大学, 教育研究部医療学系連携医学部門, 助教 (50552733)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 胎児期アルコール曝露 / アカタラセミア / 酸化ストレス / 遺伝子発現変化 / 神経分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
妊娠中の胎児脳へのアルコール曝露により起こる胎児性アルコール症候群(FAS)の発症機構解明のために、マウスES細胞のin vitroデフォルト神経分化系を用いて作出した神経細胞の質の評価に適するマーカー遺伝子の選定を行った。神経特異的なモノアレル発現を起こすゲノム刷り込み遺伝子Ube3aについて、そのゲノム刷り込みの度合いを神経細胞の質の指標として、神経分化過程の各ステージで発現する神経マーカー遺伝子の発現との相関を調べるべく、in vitroデフォルト神経分化系で作出した神経細胞由来RNA 54サンプルのUbe3aゲノム刷り込みと神経マーカー遺伝子の発現を解析した。解析した10遺伝子のうち、Ube3aのノンコーディングアンチセンス転写産物であるUbe3a ASと微小管結合タンパク質Mtap2とが、Ube3aゲノム刷り込みの度合いと高い相関係数を示すことが分かった。また、ロジスティック回帰分析により、Ube3aゲノム刷り込みの度合いと関連するマーカー遺伝子を変数減少法で選定した結果、これら二遺伝子と微小管を構成するbetaチューブリンであるTubb3が最終モデルに含まれた。これらの結果から、Ube3aゲノム刷り込みという神経特異的な遺伝子発現制御をin vitroでどれだけ再現できたかについての簡便な評価系を確立することができたと言える。また、Ube3aゲノム刷り込みの度合いの分布が正規分布となることを確認できたことから、以降の統計解析手法としてパラメトリックな統計手法を用いる方針に定めることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウスES細胞のin vitroデフォルト神経分化系を用いた解析と併行して、マウスの曝露実験系の確立を進めているものの、実験系の確立に時間がかかっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
胎児アルコール曝露による網羅的なDNAメチル化解析の結果、Ube3aが位置するゲノム刷り込み遺伝子のクラスターにおいてゲノム刷り込みを制御するDNAメチル化が変化することが示されている。ゲノム刷り込みがDNAメチル化によって制御されていることから、胎児アルコール曝露により、Ube3aゲノム刷り込みが影響されうることが予想される。今年度明らかになった遺伝子マーカーの発現とUbe3aゲノム刷り込みとの関連性が、胎児アルコール曝露によってどのような影響を受けるかについて、母性ゲノムと父性ゲノムの識別が可能な我々のF1ハイブリッドマウスES細胞のin vitroデフォルト神経分化系を用いて解析を進める。そのために、Ube3aゲノム刷り込み領域のDNAメチル化を評価する実験系を整備し、アルコール曝露の影響が神経分化特異的なゲノム刷り込みの破綻を引き起こすのか検討する。それと併行して、マウスの曝露実験系の確立を進め、in vitroでの検証実験を行う。
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Causes of Carryover |
マウスの曝露実験系の確立の遅延に伴い、その後の解析のために計上していた使用額が次年度に繰り越しとなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した初年度予算及び当初予定の次年度予算は、主に培養細胞用の培地とDNAメチル化解析用、遺伝子発現解析用の試薬等の消耗品費、研究打ち合わせや学会参加等の旅費や検体等の運送費やシーケンス解析等の外注費に当てる。
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Research Products
(6 results)