2016 Fiscal Year Research-status Report
長期漢方薬投与における意欲的行動評価系の確立とアパシーに対する漢方薬の有効性評価
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16K19321
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
濱口 卓也 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (70770684)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 意欲 / 漢方薬 / 抑肝散加陳皮半夏 / オペラント / レバー押し |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は「漢方薬投与における意欲的行動評価系」を確立し,漢方薬介入による意欲的行動の変化を6ヶ月以上にわたる長期間評価することに成功した。 オペラント行動課題は,毎日課題を行い,薬剤投与による意欲への影響を短期間評価するために用いられるのが一般的である。しかし,本研究で行う漢方薬投与は6ヶ月間以上という長期であり,毎日オペラント課題を行うことは現実的ではなかった。まず,野生型マウスにレバー押し行動課題を週6回行い,オペラント行動課題の学習を完了させた後,オペラント行動課題を週1回もしくは週2回に減らして学習が維持されるかどうかを評価した。結果,週2回群においては全てのマウスがオペラント行動課題において評価十分な結果を出した一方で,週1回群においてはそのうちの1匹が全くレバーを押すことができなかった。この結果から,週2回のオペラント行動課題が「漢方薬投与における長期の意欲的行動評価系」として妥当であると提案した。 次に,野生型マウスにおいて,普通餌群と抑肝散加陳皮半夏混餌群とに,この「漢方薬投与における長期の意欲的行動評価系」を8週齢から40週齢まで行い,抑肝散加陳皮半夏の意欲への効果を評価した。結果,両群に意欲の差は見られなかったが,「漢方薬投与における長期の意欲的行動評価系」は漢方薬介入に適した評価系であることが確認された。抑肝散加陳皮半夏混餌で意欲に変化が見られなかった点に関して,漢方薬は健康な状態から離れた状態を健康な状態に近づけるよう作用するもので,意欲の低下した疾患モデルマウスへの適応では違った結果が得られた可能性が考えられた。 本研究で確立された「漢方薬投与における長期の意欲的行動評価系」は,意欲低下という治療法の確立されていない病態への漢方薬治療を探求する上で,有用な手法になると考えられた。これらの結果は現在論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は主に,漢方薬投与における意欲的行動評価系の確立,ハンチントン病モデルマウスへの漢方薬投与と評価,パーキンソン病モデルマウスの作成を予定していた。 「漢方薬投与における長期の意欲的行動評価系」の確立に関しては研究実績の概要に記載した通り確立に成功している。さらに,野生型マウスでの「漢方薬投与における長期の意欲的行動評価系」を用いた抑肝散加陳皮半夏投与の薬効評価も終了した。 しかしながら,3台という限られたオペラント装置において,複数の介入評価を同時に行うことはやや困難であり,ハンチントン病モデルマウスへの漢方薬介入は平成29年度の仕事となっている。また,パーキンソン病モデルマウスに関してはDAT-tTA::tetO-DTA マウスが期待していた表現型を示さず,代替案として線条体神経細胞の一部をキノリン酸で破壊して意欲低下を生じさせる,器質性脳障害モデルマウスの作成を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度はハンチントン病モデルマウスへの漢方薬投与と評価と,パーキンソン病モデルマウスに関してはDAT-tTA::tetO-DTA マウスが期待していた表現型を示さず,代替案として線条体神経細胞の一部をキノリン酸で破壊して意欲低下を生じさせる,器質性脳障害モデルマウスの作成を進めていく。
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Causes of Carryover |
購入予定であったマウスケージのステンレス蓋の在庫切れにより,翌年度に購入することになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定通りマウスケージのステンレス蓋の購入に使用する。
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