2016 Fiscal Year Research-status Report
インフルエンザの診断スコアリングシステム構築と迅速診断キットの適切な使用法の提言
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16K19322
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
種井 実佳 順天堂大学, 医学部, 助手 (60749597)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | インフルエンザ / 診断 / 感染症 / スコアリングシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザの診断にインフルエンザ迅速診断キットが汎用されている。しかし発症24時間未満の陽性率は60%と低く、患者の多くが発症早期に医療機関を受診する我が国では迅速診断キットに頼った診断には限界がある。 申請者は、これまでにインフルエンザ迅速診断キットの結果に及ぼす因子の研究を進め、キットが陰性の際も、悪寒・高熱を呈する患者ではインフルエンザを示唆しうることを明らかにした。そこで本研究では、統計学的に耐えうるサンプル数を集め、インフルエンザに特徴的な臨床情報を明らかにし、インフルエンザ診断のスコアリングシステムを作成することを目的とする。 上記を達成するため、インフルエンザ流行シーズン中に発熱、上気道症状を主訴に受診した患者で、研究への参加同意を得た者を対象として、バイタルサイン(体温、血圧、心拍数、呼吸回数)および症状(鼻汁、鼻閉、咽頭痛、咳嗽、喀痰、関節痛・筋肉痛、悪寒)、既往歴(基礎疾患の有無、インフルエンザへの罹患歴)、インフルエンザ患者への接触歴の有無、について情報を集め、インフルエンザ患者と非インフルエンザ患者間で差がないか統計学的解析を行い、インフルエンザ患者を正しくインフルエンザと診断するための指標をまず見つける。続いてその項目をもとに統計学的手法を用いて診断基準を作成し、その診断特性を実臨床で応用できるか試み、新たな診断基準を作成することを目標としている。現在、データ収集の段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
順天堂医院は特定機能病院であり、発熱、上気道症状といった軽症患者が受診することは比較的少ないが、総合診療科では病院職員の体調不良時の診療も担っており、インフルエンザ流行期には、感染予防のワクチンは義務化されているものの、職員でインフルエンザに罹患する者も一定人数いるため、インフルエンザ罹患職員の研究参加を見込んでいた。しかし、職員を対象とすると看護師が多いため、女性の割合が相対的に増えること、若年者が多くなること、また研究参加が強要される事態が起こる危険性を秘めているという理由より、倫理上、職員の参加が認められなかった。このため、対象者をリクルートに難渋し、2016-2017シーズンでは研究参加者を募ることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
インフルエンザ2017-2018の次シーズンでも職員は対象とできない状況は継続するものと予想され、発熱+上気道症状を呈する職員以外の患者から研究参加者を募ることは難しいものと考えられる。このため、方針を変え、過去(2011-2012, 2013-2014, 2014-2015)インフルエンザ様症状(発熱+上気道症状)を呈した患者について新規検査法の検討を行った際に収集した患者データを利用可能である。これを用いると120例の症例についての情報が得られる見込みである。新規患者ではないこと、また若年女性が多いというバイアスが生じるが、このデータを統計学的解析を行い、スコアリングシステム構築を試みていく予定である。
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Causes of Carryover |
順天堂医院の職員がインフルエンザを罹患した際には病院感染対策のため、総合診療科を受診することになっているが、職員への研究参加に対する強制力となる危険性があるため、倫理的配慮から職員の研究参加は認められなかった。このため、特定機能病院である順天堂医院を受診する職員以外のインフルエンザ患者は少なく、対象者をリクルートできなかった。このため必要経費として計上していたRT-PCRや説明同意文書の作成に至らず、次年度使用額に持ち越す形となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
過去のデータから必要な情報が得られる見込みができたため、データ解析のためのPC購入会計ソフトの購入に用いる。過去の鼻腔スワブ検体が-20度で保存されているため、データの不備や必要があれば追加でインエンザウイルスのRT-PCRを行う予定である。
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