2016 Fiscal Year Research-status Report
Ras阻害薬による慢性進行性肝炎の新たな治療法と肝発癌抑止法の開発
Project/Area Number |
16K19330
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中川 良 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (60594596)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | PBC / AIH / N-RAS / Ras阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の遂行により、原発性胆汁性胆管炎(PBC)のCD4+T細胞におけるN-Rasの高発現が炎症性サイトカインの産生を亢進させることが明らかとなった(J Hepatol, in press, 2017)。そして、Ras阻害剤を用いN-Rasを抑制することで、PBCにおけるCD4+T細胞の炎症性サイトカイン産生を抑制できることを示した。 本年度は慢性進行性肝炎の中でPBCと自己免疫性肝炎(AIH)での解析を主に行うことができた。PBCのCD4+T細胞ではRasを中心としたT細胞受容体伝達系が活性化し、PBCで低下するmicroRNAもepigeneticにその制御に関わりPBCの病態を形成することを示した。特にmiR-425はN-Rasを標的としIL-2やIFN-γなどの炎症性サイトカイン産生を制御することが明らかとなった。そして、N-Rasを抑制することで炎症性サイトカイン産生を制御できることを示した。近年の報告によりPBCの病態形成ではCD4+T細胞の分泌するIFN-γが中心的な役割を示すことが明らかとなった。我々の報告ではPBCの高IFN-γの原因の一端を明らかとし、N-Rasを標的とした治療はPBC病態に基づいた治療法になる可能性を示したと考える。現在、Ras阻害剤による炎症性サイトカイン産生抑制能の検証を開始している。そのために、サイトカイン産生レポーター細胞を確立しRas阻害剤での小規模スクリーニングを行い、その抑制能を検証している。これを基にRas阻害剤の選別及びモデルマウスでの実験系へと研究を進めたい。 また、AIHのCD4+T細胞においてはRas signalの異常は認められなかったものの、JAK-STAT signalの活性が認められた。AIHはIFN-αにより誘導されることが知られ、IFN-αはJAK-STAT signalを活性化することが知られている。しかし、AIHの分子生物学的解析でこれらを明らかとした報告はなく、解析を継続すると共に、病態形成に根ざした治療法の可能性を検討する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究による論文はJournal of Hepatology (IF=10.590)に採択された。この報告では前述のようにPBCの病態に即した新たな治療法を提言しており、これを専門誌ではあるが評価の高いJournalに評価されたことは非常に好ましいことと考える。そして、この報告を基に計画が更なる解析へと進展しており十分な進展をしていると考える。 また、AIHにおいてはRas阻害剤ではないもののJAK-STAT阻害による治療法の可能性も見いだしており新たな展望が期待できる。そのため、本研究は当初の計画以上に進展していると評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方法として本年度にPBCおよびAIHの解析結果から得られた知見を基に研究を行う。PBCではサイトカイン産生レポーター細胞にFDA承認薬剤ライブラリーを用いて治療適性の高い薬剤の選別を行う。そして得られた薬剤をPBCマウスモデルに投与しその作用を解析する。 AIHについてはJAK-STAT signalの活性がCD4+T細胞を介してその病態にどのように作用するか培養細胞系を用いて明らかにする。そして、JAK-STAT阻害剤による治療の適正を検討する。
|
-
[Journal Article] miR-425 regulates inflammatory cytokine production in CD4+ T cells via N-Ras upregulation in primary biliary cholangitis2017
Author(s)
Ryo Nakagawa, Ryosuke Muroyama, Chisato Saeki, Kaku Goto, Yoshimi Kaise, Kazuhiko Koike, Masanori Nakano, Yasuo Matsubara, Keiko Takano, Sayaka Ito, Masayuki Saruta, Naoya Kato'Correspondence information about the author Naoya KatoEmail the author Naoya Kato, Mikio Zeniya
-
Journal Title
Journal of Hepatology
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-
[Presentation] DECREASED MIR-425 INDUCED INFLAMMATORY CYTOKINE PRODUCTION VIA N-RAS UPREGULATION IN CD4+ T CELLS OF PRIMARY BILIAR CHOLANGITIS2016
Author(s)
Ryo Nakagawa, Ryosuke Muroyama, Kazuhiko Koike, Chisato Saeki, Sayaka Ito, Sayuri Morimoto, Kaku Goto, Yasuo Matsubara, Naoya Kato, Mikio Zeniya
Organizer
The International Liver Congress2016, EASL
Place of Presentation
Barcelona, Spain
Year and Date
2016-04-13 – 2016-04-17
Int'l Joint Research