2016 Fiscal Year Research-status Report
血液と膵液を用いた膵疾患スクリーニング、および、悪性度評価システムの構築
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16K19342
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小林 隆 神戸大学, 医学研究科, 特命助教 (90709669)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 膵がん / メタボロミクス / バイオマーカー / 質量分析 / 血液 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は血液と膵液のメタボロミクスを行ない、膵疾患のスクリーニング、および、悪性度評価システムを構築することを目的としている。平成28年度においては、GC/MSとLC/MSを統合した網羅的解析系によって膵疾患血液バイオマーカーを再探索し検証することを目標としていたため、まずは分析対象とする代謝物ライブラリを整備し、これらの分析条件を最適化した。これによって、GC/MSとLC/MSを合わせて約600成分を対象に分析することを実現した。また、特に膵がんのバイオマーカーとして期待される16成分を我々のこれまでの解析結果から選定し、これらの成分については安定同位体を用いた検量線による定量的測定を導入することで、より確実な分析が行える分析系を構築した。検体の採取法については、温度や時間などメタボロームに影響し得る様々な要因と結果との関連を検討実験を繰り返すことで明らかにし、最適かつ実現可能な手順を標準操作手順として確立し、実際の手順に導入した。次に、膵疾患の血液バイオマーカー探索として、過去に多施設から集められた膵がん・膵管内乳頭粘液性腫瘍・慢性膵炎を主とした患者血液を分析対象として解析を行った。特にステージ2までの膵がん55例と健常対照58例の血清の解析を行った結果、16成分中11成分に有意差が認められ、このうち2成分を組み合わせた回帰モデルは、ステージ2までの膵がんに対する感度が70.4%で、CA19-9より優れていた。また、それらとCA19-9を組み合わせたところ、感度90.7%、特異度89.5%に向上した。これらの組み合わせを、さらに別の独立した膵がん16例と健常者16例の血漿で検証したところ、感度81.3%、特異度93.8%であり、一定の精度が保たれていることを確認した。特に切除可能膵がんに限定したところ、感度は100%であり、有用性が強く示唆される結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の目標としていた分析系の構築、検体採取方法の確立と導入、膵がん血液バイオマーカーの再探索と検証をいずれも達成しており、順調といえる。血液バイオマーカーの感度も、特に重要な切除可能膵がんに対しては目標とする90%以上を小規模での検証ながら達成しており、非常に有意義な進捗を得られたと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、膵液メタボロミクスによる膵疾患の悪性度評価法の検討と、バイオマーカー候補物質のもつ生物学的意義の解明を目標に研究を行う。膵液の分析については、既に検体の採取方法や保存法についていくつかの条件検討を行い、実現可能な最適条件を見出した。現在はこの条件で検体収集を継続しており、年度内には分析を行い悪性度との関連を評価する。悪性度との評価は、画像検査での臨床的な悪性度指標である膵嚢胞内の結節有無や壁肥厚の有無、主膵管拡張の有無を指標とし、まず全例で検討する。さらに、細胞診や切除が行われている症例では、病理学的な悪性度をゴールドスタンダードとして膵液メタボロームとの関連を追加検討する。これらと同時に、血液メタボロミクスと膵液メタボロミクスの関連を調査し、さらに、メタボロームに限らず遺伝子、タンパクレベルも解析することで、膵疾患でそれらの成分が変動する機序の手がかりを得る。
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Causes of Carryover |
特に学会発表や論文報告のための費用を予定していたが、平成28年度は学会発表を行わなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は欧米での国際学会も含めて積極的に成果発表を行う予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Identification of highly sensitive biomarkers that can aid the early detection of pancreatic cancer using GC/MS/MS-based targeted metabolomics.2017
Author(s)
Hirata Y, Kobayashi T, Nishiumi S, Yamanaka K, Nakagawa T, Fujigaki S, Iemoto T, Kobayashi M, Okusaka T, Nakamori S, Shimahara M, Ueno T, Tsuchida A, Sata N, Ioka T, Yasunami Y, Kosuge T, Kaneda T, Kato T, Yagihara K, Fujita S, Yamada T, Honda K, Azuma T, Yoshida M
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Journal Title
Clin Chim Acta
Volume: 16
Pages: 98-104
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Book] 臨床消化器内科2016
Author(s)
小林 隆, 久津見 弘, 八木 洋輔, 酒井 新, 吉中 勇人, 西海 信, 吉田 優, 東 健
Total Pages
6
Publisher
日本メディカル