2016 Fiscal Year Research-status Report
in vivoイメージングを用いたPKR阻害剤の肝細胞癌増殖抑制効果の解明
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16K19349
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
渡辺 崇夫 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (90650458)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 肝細胞癌 / 治療標的 / イメージング / C型肝炎ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでにC型肝炎ウイルス (HCV)関連肝細胞癌においてProtein kinase R (PKR)がErk1/2, JNK1などMAPKの活性化により、c-Fosおよびc-Junを活性化し、それに伴う細胞増殖促進作用を示すことを報告してきた。PKRの腫瘍増殖抑制効果をin vivoで確認するために肝細胞癌株Huh7をヌードマウスに皮下移植したモデルを作成し、既存のPKR阻害剤を投与し、腫瘍の増殖が抑制されるかどうかを検討した。PKR阻害剤の連日腹腔内投与によりコントロールに比べて明らかに腫瘍の増殖が抑制され、さらにその効果には用量依存性がみられた。阻害剤の連日投与1ヶ月後に移植した皮下腫瘍から組織を回収し、PKR, リン酸化PKRのウエスタンブロット解析、リン酸化PKRの免疫組織染色を行い、コントロールとの比較を行った。PKRの阻害剤によるリン酸化PKRの阻害作用には個体差、部位差が強く既存の阻害剤ではPKRシグナルの阻害が十分ではないと考えられた。さらにPKRで活性化されるJNK1が肝細胞癌におけるDNAメチル化に関与しているという報告があることからPKRが肝細胞癌のDNAメチル化に関与するかについて検討した。HCV複製肝癌細胞株においてPKRノックダウンによりDNAメチル化酵素 (DNMT1, 3a, 3b)の発現がRNAレベル、さらにタンパク質レベルで抑制されることを明らかにした。それにより複数の肝細胞癌内遺伝子のメチル化に変化がみられた。特に癌促進遺伝子であるP-REX1の発現はPKR阻害により抑制され、その抑制はDNMT阻害剤である5-Aza-dCによりキャンセルされることが明らかとなった。またそれらPKRによるDNMT発現変化はHCV感染のない肝癌細胞株では見られず、HCVとの何らかの相互作用を介している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はPKR阻害剤によりin vivoでの肝細胞癌増殖抑制効果を明らかにした。さらに予定通り、阻害剤投与終了後の皮下腫瘍からタンパク質を回収し、ウエスタンブロット解析でPKRの活性を示すリン酸化PKRの発現をコントロールと比較した。リン酸化PKRの抑制は見られているものの部位差が強く効果は一定でなかった。そのためよりPKR阻害作用の強い新規化合物を検索していく予定である。またPKRの肝細胞癌における役割としてPKRの肝癌細胞内遺伝子のメチル化に及ぼす影響について解析した。同内容については国際学会にて成果を発表し、現在論文化に向けて準備を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度はPKR発現そのものが腫瘍の増殖にin vivoで作用するか否かを明らかにするためshPKR発現レンチウイルスを用いてPKR持続knockdown細胞株を作成する。作成した細胞株をマウスに皮下移植し腫瘍の増殖が抑制されるかどうか明らかにしたい。そのうえで企業との共同研究などにより化合物ライブラリーを入手し、PKRシグナルの抑制効果の強い新規PKR阻害剤を検索したい。そのため学内の共同研究により、ハイスルプットなスクリーニングが可能な実験系を立ち上げることを計画している。また当初の計画に示したPKR下流の遺伝子のプロモーターを組み込んだレポーターを作成し、in vivo イメージングによるPKRシグナルの腫瘍増殖に対する重要性を検討する実験も引き続き学内の共同研究により進めていきたい。
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Causes of Carryover |
今年度に施行予定であったshPKR発現レンチウイルスを用いたPKR持続knockdown細胞株の作成を次年度に行うこととしたため。今年度はPKRと肝細胞癌のDNAメチル化に関する実験結果をまとめることを優先した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
shPKR発現レンチウイルスを用いたPKR持続knockdown細胞株の作成や、PKRの下流の遺伝子のプロモーターを組み込んだレポータープラスミドの作成などに使用したい。
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Research Products
(2 results)