2016 Fiscal Year Research-status Report
門脈圧亢進症に伴う膵うっ血評価の有用性の検討と肝硬変モデルラットを用いた病態解明
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16K19350
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
黒田 太良 愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (10771876)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 門脈圧亢進症 / 膵うっ血 / インスリン分泌低下 / 肝硬変 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝硬変患者を対象としたShear wave elastography(以下SWE)による膵硬度測定については,肝硬変群および対照群50例目標中の6例に実施している.それぞれの症例に対し,膵硬度に加え,肝硬度,脾硬度,造影エコー検査による膵血流の評価,グルカゴン負荷試験によるインスリン分泌機能評価,動脈血ガス分析,各種血液検査を行いデータ収集中である.肝硬変モデルラットの作成およびインスリン分泌機能評価については,四塩化炭素16週間の腹腔内投与により,肝硬変モデルラット作成に成功した.組織学的評価において,肝硬変であることが確認された.また門脈内カテーテル留置によって測定した門脈圧は,肝硬変ラットにおいて対照ラットより門脈圧が亢進していることも確認された.現在はIVGTTによるインスリン分泌機能評価を行うべく,末梢血および門脈血内でのインスリン分泌量の変化を評価している.また,過去の報告などから,インスリン分泌能低下の機序として,膵の低酸素状態がある可能性を考え,門脈血内の酸素分圧測定に加え,膵組織内での低酸素状態の有無について評価することを検討中であり,低酸素化での膵組織の培養,内分泌機能への影響,低酸素誘導因子(hypoxia-inducible factor: HIF)の活性などを評価していく方針である.さらに,四塩化炭素投与による肝硬変モデルラットだけでなく,胆管結紮および門脈結紮による門脈圧亢進モデルラットの作成を行い,門脈圧亢進によるす膵組織への影響および膵内外分泌機能への影響を検討していく方針である.肝硬変モデルラットにおける膵硬度の評価は,膵組織の大きさなどからSWEによる硬度評価には限界があることがわかった.今後は直接的な硬度評価や他の動物モデルを用いた硬度評価なども視野に入れ,他の検討方法について再考が必要であると考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
肝硬変患者を対象としたShear wave elastographyによる膵硬度測定については,組み入れ基準に該当する症例が少なく,エントリーが遅れているため,まだ解析にまで至っていない.肝硬変ラットによる検討は,肝硬変モデルラット作成,門脈圧測定などの手技確立にはすでに成功しており,予定よりやや早くインスリン分泌能低下の機序解明検討に着手している.ただし,門脈圧亢進の直接的な影響を検討するため,当初予定していなかった門脈結紮および胆管結紮モデルラット作成を検討中であり,研究遂行がやや遅れる可能性がある.
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Strategy for Future Research Activity |
肝硬変患者を対象としたShear wave elastographyによる膵硬度測定については,症例集積が遅れているため,愛媛大学医学部附属病院を中心としたネットワーク組織(EPOCH study group)を通じて呼びかけを行い,対象症例のさらなる集積を促す方針である.また,症例集積が予想より遅れる場合には予定症例数を少なめに設定し,両群20-30例の時点で一旦解析を行う方針である.肝硬変モデルラットにおける検討については,新たなモデルラット作成も視野に入れて研究計画をやや修正しつつ当初予定していたメカニズム解析をすすめていく方針である.
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Causes of Carryover |
肝硬変モデルラットにおける膵うっ血,インスリン分泌機能低下の機序として,当初,圧による影響を考え,モデルラット用圧カテーテルシステムの購入を予定していたが,今回の検討において,膵の低酸素状態であることも一つの機序として検討する必要があると考えられたため,購入を見合わせた.また,ヒトを対象とした研究の症例集積が遅れたため,必要な消耗品購入(主に超音波用造影剤や内分泌負荷試験用試薬)を見合わせた.以上の理由から次年度使用額が生じたと考えている.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
膵うっ血,インスリン分泌低下の機序解明の目的で,初年度で購入予定であったモデルラット圧カテーテルシステムおよび必要に応じて低酸素チャンバーの購入を予定している.またヒトを対象とした研究については症例集積に応じて当初予定していた消耗品購入(主に超音波用造影剤や内分泌負荷試験用試薬)を予定している.
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